睡眠不足が関係?心不全のリスク、職場に2割 突然死の恐れも 不規則な勤務は要注意

西日本新聞

 心不全のリスクを抱えている人は職場に2割いて、睡眠不足と相関関係がある-。そんな調査結果を佐賀大学医学部の野出孝一教授(循環器内科)がまとめた。広告大手「電通」の新入女性社員の過労自殺やNHKの女性記者の過労死が社会問題となり「働き方改革」が叫ばれる中、あらためて企業の長時間労働対策が求められそうだ。

 ■2千人以上を採血

 野出教授は、県内の工場や事務所で働く男女計2140人(平均年齢50歳)を対象に採血。心不全を引き起こす病気の診断に用いる血液中のホルモン「NT-proBNP」の濃度を調べた。

 BNPが正常値の3倍を超え、将来心不全を発症する恐れがある「予備軍」は338人、7倍近くて発症の可能性が高い人は91人いた。心不全リスクを抱える人は計429人で全体の20%に上った。野出教授は「予想以上の人数だった」と危ぶむ。

 採血調査をした人のうち、885人が睡眠アンケートにも答えた。「寝付きは良いか」「途中で目が覚めるか」などの質問に対する回答を点数化し、21点満点で高いほど睡眠が足りない状態となる。睡眠障害が疑われる5・5点以上は195人と22%を占めた。

 この195人と、5・5点未満だった690人のBNP濃度を比べると、睡眠障害が疑われる人たちの濃度が24%高かった。特に、女性は34%も高く、男性の3%を大きく上回った。

 野出教授は「睡眠不足と心不全には相関関係がある」とした上で、「女性に顕著だったのは、男性は酒やたばこ、肥満など心臓に悪影響を及ぼす複合的な要因を抱える傾向にあり、数字に現れなかったのだろう」とみている。

 ■自覚症状ないまま

 勤務時間が昼になったり、夜になったりするシフト制の労働者は、睡眠と起床をつかさどる生体リズムが不安定になりがちという。

 野出教授は「シフト制では、定時勤務の人に比べて交感神経が高ぶって緊張状態が続く。睡眠の質が悪く、心臓に負担がかかる恐れがある」と指摘。自覚症状がないまま体内では心筋細胞でBNPが増殖し、心臓の左心室から動脈を通じて、全身へと広がるという。

 このため(1)疲れやすい(2)息切れしやすい(3)動悸(どうき)がする-などを感じたら「病院でBNP検査をし、早期発見と生活習慣の改善に役立ててほしい」と話す。心臓病は明確な前兆がない場合があり、突然死につながる恐れがあるためだ。

 過労死は高止まりが続く。厚生労働省によると、「脳・心臓疾患」が原因で死亡したとして労災認定された人は2002年度から13年連続で100人を超えた。15年度は96人だったが、16年度は107人と再び100人を超えた。

 ■働き方改革が急務

 近年は、少子高齢化を背景に人手不足が進み、県内の有効求人倍率も高水準が続く。こうした状況が、労働者のさらなる負担となることも予想される。

 九州経済調査協会(福岡市)の17年版九州経済白書によると、九州・沖縄、山口各県の計741社・団体の2割弱が「人手不足の解消は、時間外・休日出勤で対応する」と回答した。

 一方、勤務後に休息取得を義務付ける「勤務間インターバル規制」の導入は進んでいない。厚労省によると、昨年1月の全国調査(有効回答は4432社)では導入した企業は1・4%にとどまった。

 野出教授の調査は、県内の病院で08年にあった職場健診で実施し、このほど集計した。調査から10年がたっており、実際に心不全を発症した患者数を追跡調査する方針だ。野出教授は「睡眠の重要性を訴え、企業の働き方改革に役立ててもらいたい」という。

=2018/03/15付 西日本新聞朝刊=

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