タイでクロヒョウの落書き急増 密猟容疑の「建設王」優遇、批判が噴出 当局はすぐに消去

西日本新聞

イタリアン・タイ・デベロップメントの本社近くに描かれたクロヒョウの落書き=20日、タイ・バンコク 拡大

イタリアン・タイ・デベロップメントの本社近くに描かれたクロヒョウの落書き=20日、タイ・バンコク

路地の壁に描かれたクロヒョウ。その日のうちに白く消去された(制作者のフェイスブックより) 同じ場所に新たなクロヒョウの落書きが出現していた。「軽い罪なの?」とある=18日、タイ・バンコク

 【バンコク浜田耕治】タイの路上にクロヒョウの落書きが急増している。現地の大手企業の社長がクロヒョウなどを密猟した疑いで2月に逮捕されたことに端を発し、「公正な裁き」を求める新たな形の抗議活動に発展しているのだ。背景にはタイ社会が抱える不平等や、富裕層に甘い捜査当局への不満がのぞく。

 密猟容疑などで逮捕されたのは、タイ最大手の総合建設会社「イタリアン・タイ・デベロップメント(ITD)」のプレムチャイ社長(63)。社長とその社員ら計4人は2月3日、中部カンチャナブリ県の動物保護区域にキャンプ名目で入り、保護されているクロヒョウやキジなどを違法に狩猟したとして、翌4日に現場で身柄を拘束された。

 地元メディアは、テントの前で森林保護官らに囲まれ、折り畳み椅子に座る社長の写真を大々的に報じた。現場は世界遺産にも登録された原生林。社長らはライフル銃3丁や銃弾百数十発を所持し、付近からはクロヒョウの死体や毛皮、その尻尾を煮込んだスープも見つかった。

 ITDはスワンナプーム国際空港など多くの大規模事業を手掛け、社長は「建設王」とも呼ばれる業界の大物。それだけに、圧力に屈せずに身柄拘束に踏み切った森林保護官を地元メディアが称賛。捜査の行方に注目が集まった。

 だが、身柄の引き渡しを受けた警察は「自分は関与していない」と容疑を否認する社長をすぐに15万バーツ(約51万円)で保釈。海外への出張も許可した。さらに事情聴取を受けるために出頭した社長を警察高官が合掌して出迎える様子が報じられると「容疑者に丁寧すぎる」と批判が噴出した。

 クロヒョウをモチーフにした落書きが現れ始めたのは事件直後。他の落書きは放置されるのに、クロヒョウのものだけが当局にすぐに消されると、落書きは瞬く間に各地に拡散した。特権階級による希少動物殺害への怒りが「新たな抗議の形となって表れている」と地元紙は分析する。

 タイでは富裕層が特別扱いされ、警察が捜査に手心を加えるケースが目立つ。2012年に栄養ドリンク剤「レッドブル」の創業者の孫がフェラーリで警察官をひき逃げして死亡させる事件を起こした際も、警察は逮捕後に保釈し、今も国外逃亡を許したままだ。

 このため、国民の間には「今回もうやむやになる」との不信感が根強い。バンコクの街頭でクロヒョウのお面を着けて抗議活動を続ける環境保護グループは「(公平であるべき司法の)てんびんは金持ちと権力者の方に傾かないでほしい」と訴えている。

=2018/03/26付 西日本新聞朝刊=

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