「娘の傷は一生消えない」避難所での性被害の闇 把握10件、相談できず潜在化も 熊本地震2年

西日本新聞

 熊本地震の発生から2年近くになり、避難所などで起きた性被害の実態が明らかになりつつある。地震があった2016年度に熊本県警が把握した避難所や周辺でのわいせつ事案は、強制的な性交や盗撮など約10件に上った。「災害時は加害者の不安定な心理状況が、弱い立場の人に暴力の形で向かいがちだ」と、専門家は対策の難しさを指摘する。

 地震から間もない16年4月下旬、熊本県内の指定避難所。避難者が寝静まった深夜、家族から離れた場所で寝ていた10代少女の布団にボランティアの少年が潜り込んだ。少女は服を脱がされ、体が固まった。助けを求める声を出せず、恐怖と痛みに耐え続けた。

 少女の無料通信アプリLINE(ライン)のやりとりを見て、被害に気付いた母親が警察に被害届を出したが、「明らかな暴行、脅迫があったと認められない」として強制性交等罪は適用されず、少年は不起訴になった。一方、民事訴訟では被害が認定され、全面勝訴した。少女の母は「地震直後の混乱のまっただ中で、娘が被害に遭うとは想像できなかった。娘の傷は一生消えない」と憤る。

 県警によると、他にも「ボランティアを称する男からつきまとわれ、体を触られた」「段ボールで仕切ったスペースで容姿を撮影された」といった相談があった。被害者が申告しなかったり、避難所の管理者が通報しなかったりしたケースもあるとみられ、全容はつかめていない。

 避難所での性被害は11年の東日本大震災でも相次いだ。国は13年に災害対策基本法を改正し、避難所の生活環境整備を自治体に求めた。さらに内閣府は16年4月に作成した避難所運営ガイドラインで「性犯罪防止策の検討が必要」と盛り込んだばかりだった。

 熊本地震の際も支援団体が相談先などを載せたポスターを県内700カ所の避難所に掲示したり、県警が巡回を強化したりしたが、被害は防ぎきれなかった。

 東日本の被災地で性暴力被害の予防啓発活動などに取り組んだNPO法人「しあわせなみだ」(東京)の中野宏美代表は「不特定多数が避難所に集まるなど、災害時は性暴力被害のリスクが高まる」と指摘する。

 減災と男女共同参画研修推進センター(東京)の浅野幸子共同代表は「性暴力は平時でさえ訴え出にくい。災害時は集団生活で個人情報が漏れることを恐れて相談をためらったり、相談を受けた人も精いっぱいで被害者を支援につなげられなかったりするため、さらに潜在化しやすい」と指摘。「多くの市民が防災研修に参加し、災害時に性暴力が起こり得ることや、照明の配置など対策方法を知る機会を設ける必要がある」と提言した。

=2018/03/29付 西日本新聞朝刊=