国立大、無期雇用転換に逃げ腰 有期の半数が更新なし…「雇い止め」も 識者「ルール逃れ」と批判

西日本新聞

 5年を超えて働く有期雇用者が4月以降、労働契約法に基づき無期雇用への転換を申し込めるルールが運用されるにもかかわらず、九州にある10の国立大で3月末に約890人が契約満了となり、少なくとも約410人が継続雇用されないことが、西日本新聞の調べで分かった。いずれも5年を超えない範囲で契約を結んでおり、無期転換の権利を得る直前に契約が切れる「雇い止め」のケースもあった。識者からは「法の趣旨に反するルール逃れだ」との批判も出ている。

 無期転換ルールを巡っては、民間企業でも同様の問題が生じている。中でも大学は少子化で経営が厳しさを増しており、長崎県立大が長崎労働局の指摘で雇い止め方針を撤回するなど、今月に入って問題が相次いで発覚している。

 各大学や文部科学省によると、10大学の有期雇用職員は計1万2874人(1月1日現在)。このうち3月末で任期満了を迎え、4月以降に継続雇用されないのは、大分大が最多で157人。次いで宮崎大94人、鹿児島大と熊本大が約50人-などだった。

 58人が満了を迎える熊本大は、契約上限を通算5年以内と定め、能力が極めて高いなどの条件を満たさない限り、更新を認めていない。この就業規則に基づき約50人が失職する。人事課は「国が交付する運営費は毎年減っている。予算が厳しく、全員を無期雇用するのは難しい」と話す。大分大、鹿児島大などにも同様の規則があり、有期職員の大半が職を失う。

 無期転換ルールは、契約社員やパートで働く人の不安定な雇用を解消するとの趣旨で、2013年4月の改正労働契約法施行で導入された。5年を超えない範囲で契約する各大学の就業規則は、施行前後に定められていた。

 一方、長崎大は昨年12月に、契約上限を5年以内とする就業規則の項目の撤廃を決めた。対象の227人については退職希望者を除いて原則継続する方針で、担当者は「予算減はどこも同じ。業務の効率化を進めて対応したい」と説明する。

 南山大の緒方桂子教授(労働法)は「5年近く雇用された人材は、経験を重ねて事務処理能力も上がっている。無期転換を逃れるため、契約上限の規則を定めることが、大学の人事政策上、妥当かどうかを考える必要がある」と指摘した。

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■労働者「雇い止め」相談も

 無期転換ルールを巡る相談は、福岡労働局にも相次いでいる。3月1~15日で204件に上り、うち11件は「雇い止め」に関する相談だった。九州の他の労働局は相談数を公表していないが、佐賀労働局が「年末から増えている」とするなど、大学以外でも問題が広がっているとみられる。

 福岡労働局によると、相談を寄せたのは、使用者180件、労働者15件、不明・その他9件。内容ごとに分類した延べ数は、ルールの仕組みについてが87件、都道府県労働局長が認定すれば定年再雇用者には適用されない特例についてが105件-など。契約が切れて6カ月経過すれば有期で再雇用できる「クーリング」に関する相談も4件あった。

 雇い止めの相談は2月までにも寄せられていた。改正労働契約法が施行された2013年4月前後に、企業側が契約期限を5年以内に変更したり、1年ごとの更新を最大5回に改めたりして、無期転換を逃れようとする事例だった。福岡労働局は事実関係を調査した上で、指導や啓発を行っているという。

 厚生労働省は「無期転換直前の雇い止めは違法ではないが、法の趣旨に照らして望ましくない」との見解を示す。

=2018/03/30付 西日本新聞朝刊=

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