「ここで生きるネット」発 吉弘拓生・群馬県下仁田町副町長

西日本新聞

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吉弘拓生さん

◆「よそ者」が駆けた3年

 31日付で、群馬県下仁田町の副町長を退任することになった。職員人事交流の一環で2015年4月、福岡県うきは市職員から就任して丸3年。やり残したことはあるが、町の活性化に向けいろいろな種をまくことはできたと思う。

 下仁田は群馬県南西部にある、人口約7500人の町。全国で最も消滅する可能性が高いとされる南牧村、避暑地で知られる長野県軽井沢町などに接している。下仁田ネギ、こんにゃくなどが有名だが、少子高齢化の波は高く、人口減に歯止めがかかっていない。

 着任当初、「よそ者」は決して歓迎されていなかった。管理職を含む職員のほとんどが年上で、見えない壁を感じた。そこで一月に25回くらい飲み会をした。コミュニケーションを図り、腹を割って「よそ者」ができること、できないことを話し合った。町商工会の若手経営者たちも巻き込んだ。次第に職場の血の巡りが良くなってくる実感があった。役場に相談に訪れる町民が目に見えて増えた。

 そんな中、町のPR動画を企画した。下仁田のことを知ってほしいと願う若手職員が中心になって製作した。出演者、撮影・編集を手掛けた人は全て町民。ありのままの町の姿を映す動画を見て、「何もないといいながら、背景に映る町と人の風景がいい」と共感してくれる人がたくさんいた。何よりうれしかったのは、町民が今まで「当たり前」と思っていた人や自然や産業を、自ら「すごい」と感じるようになったことだ。

 とはいえ、人口減少が止まらない状況は変わらない。就任以来、約600人が減った。そのため昨年、若者の定住施策として「ねぎとこんにゃく下仁田奨学金制度」を創設した。高校、大学等に進学する町民を後押しする奨学金で、卒業後に町に定住すれば、町が元本を実質肩代わりする仕組みだ。地元の金融機関や企業の理解と協力で実現できた。新年度予算には乳幼児保育を充実させる事業を盛りんだ。こんにゃく製品の付加価値を高めた新加工場なども本格化する。

 こうした取り組みがどんな花を咲かせ、実をつけるか。見届けないまま下仁田を離れることに心残りはあるが、活性化は短期間で成就できるものではない。幸い下仁田にはチャレンジ精神にあふれた若い人が増えている。私がまいた種を育て、花を咲かせ、実を収穫し、また種を採って新たな花を咲かせるだろう。いつの日か、次の世代の花を見に戻りたい。 (談)

 吉弘 拓生さん 1981年生まれ、福岡県久留米市出身。同県うきは市職員のときにユニークな地域起こしで注目される。下仁田町では地方創生関連事業を担当。4月から再びうきは市職員となる。

=2018/03/30付 西日本新聞朝刊=

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