重松清さんに「あすなろ三三七拍子」という小説がある…

西日本新聞

 重松清さんに「あすなろ三三七拍子」という小説がある。舞台は新年度から部員ゼロとなる大学の応援団。廃部の危機に、OB幹部の会社社長は中年社員に社命を下す。「大学に入り団を再建せよ」

▼無事に入学して団長に就いたが、周りは非体育会系の面々ばかり。新加入の団員は「へたれ」と呼ばれる軟弱男子。さらには、男社会の不合理性や古い体質を卒論に書くため観察するという女子学生。顧問職には「男の世界」なんて大嫌いな女性准教授まで…

▼特にこの先生、行動分析が誠に鋭い。男が現実逃避するパターンをこう喝破する。「年功序列を持ち出す」「開き直って聞き流すことに徹する」のほか、「よいしょやおべんちゃらで場をごまかす」。耳の痛いご説ばかり

▼時代とともにタテの関係や伝統の価値観も変わっていく。そんな中でも変わらない応援団の神髄。重松さんは「応援とは自分以外の誰かのことを、ひたすらに、がむしゃらに思うこと」と語らせる

▼世の中は「人のことを応援できる奴(やつ)と、できない奴の二種類」とも。応援なんて格好悪いと思う者も、今でも今までも誰かに応援されてきたんだ、と団長の訴えは熱い

▼今日から新年度が実質スタートする。新しい一歩を踏み出した方々に、団長の言葉を借りてエールを送る。「自分のことを一生応援してくれるひとに出会ってくれ」「自分が一生応援したくなるひとに出会ってくれ」

=2018/04/02付 西日本新聞朝刊=

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