SLの余生に明暗 さびたまま放置の車両も 運命を分けたのは何?

西日本新聞

さび付いてぼろぼろの福岡県八女市立花町のSL。周囲は金網で囲われている 拡大

さび付いてぼろぼろの福岡県八女市立花町のSL。周囲は金網で囲われている

きれいな状態で保存されている福岡県八女市黒木町のSL

 福岡県八女市の市有地に蒸気機関車(SL)が放置されている。市内の別のSLはきれいに保存されているのに-。特命取材班に疑問の声が寄せられた。SLの運命を分けたのは何か。取材班は現地へ向かった。

 SLは、同市立花町の市立花体育館の敷地にひっそりと置かれていた。緑色の金網で囲われ、近づくことができない。あちこち塗装が剥がれ、さびて朽ち果てている。かつては体育館に面した国道3号から見られたというが、今は姿を隠すように道路とSLの間に車庫が立つ。

 「一生懸命働いた終(つい)の棲家(すみか)がこのありさま。あまりにかわいそう」と情報を寄せた同県久留米市の堤諭吉さん(70)は憤る。

 なぜSLはやって来たのか。市立花支所によると、SLは「D60形」。主に筑豊本線などを走り、筑後地方は走っていなかった。1972年10月に廃車。同年12月から、八女市に編入合併された旧立花町で展示を始め、73年1月に旧国鉄と貸借契約を結んだという。持丸弘総務係長は「来た経緯は資料が残っておらず、分からない」という。

 当時は話題になったのではと考え、図書館で町の広報誌をめくってみた。72年前後の数年間を調べてみたが、SLに関する記述は見当たらない。町史を調べても同じだった。

 当時を知る元町議の男性が事情を教えてくれた。「議会でもなぜ持ってくるか議論になった。町おこしをしようという感覚だったと思う」。国内でSLが退役した75年ごろにかけて「SLブーム」が起き、旧国鉄は全国の自治体などに列車の無償貸与を進めた。旧立花町に線路はなかったが、借り受けて、当初は見に来る人も多かったという。

 八女市立花町の高橋康弘さん(65)は「住民はSLの存在を知っていても関心が薄いからねぇ」。手入れもされないまま朽ちていったのか-。

 対照的なのが、同市内の旧黒木駅近くにあるSL「C11形」。八女市に合併した旧黒木町が74年11月に借り受けた。かつて旧黒木町を通る矢部線(羽犬塚-黒木、85年廃線)を走っていたSLで、住民の愛着も深く、観光スポットにもなっている。保存状態がいいのは、市職員が定期的に清掃をしているため。かつて地域に線路があり、SLになじみがあったかが、手入れを施すかどうかの“分水嶺(れい)”になったようだ。

 朽ちたSLは移設に3千万円程度、解体に千数百万円程度かかるとして、八女市は現時点で対応を決めかねている。インターネット上では、鉄道ファンから「見捨てられて…」とささやかれている。未知の場所に来て、余生を送るにはあまりにふびん。SLの悲しい汽笛が聞こえた気がした。

=2018/04/20付 西日本新聞朝刊=

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