混迷政局 「うみを出す」約束果たせ

西日本新聞

 得意とする外交で一定の成果はあっただろう。だが、政権が抱える疑惑や不祥事は何一つとして解明も解決もしていないことを忘れてもらっては困る。

 安倍晋三首相がトランプ米大統領との首脳会談を終えて帰国した。歴史的な米朝首脳会談に向けて足並みをそろえた北朝鮮対応などを手土産に政権浮揚を図りたいところだろうが、国内で首相を待つのは混迷政局と困難さを増す政権運営である。

 首相訪米の間に、セクハラ疑惑が報じられた財務省の福田淳一事務次官は辞任に追い込まれた。首相の盟友として政権を支える麻生太郎財務相には与党内からも責任論がささやかれる。

 首相の帰国に合わせるように、学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設を巡り内閣府から文部科学省に送られたメールの存在が新たに明らかになった。

 愛媛県や同県今治市の職員らが首相官邸を訪問した2015年4月2日当日のメールで、当時の柳瀬唯夫首相秘書官との面会予定が記載されている。

 この日のやりとりを愛媛県が「備忘録」として記した文書では、柳瀬氏が
「首相案件」などと発言したとされる。柳瀬氏は「記憶の限りでは会っていない」と説明するが、疑惑は一段と深まったといえよう。

 柳瀬氏の国会招致は不可避だが、虚偽証言をした場合に偽証罪に問える証人喚問を求める野党と参考人にとどめたい与党の対立は激しくなる一方だ。

 与党側は、ここで柳瀬氏の喚問に応じれば、次は麻生氏の辞任要求を野党がさらに強めると警戒しているのだろう。副総理でもある麻生氏の進退は政権の命運を左右しかねない。

 結局、23日の衆参予算委員会の集中審議は見送りになった。これでは、与党は一連の疑惑解明に後ろ向きだと国民に受け止められるのではないか。「うみを出し切る」という首相の約束は本当に果たされるのか。そんな疑問を禁じ得ない。

 疑惑解明に与党も野党もないと私たちは繰り返し指摘してきた。政治と行政の信頼回復に向け、ここは「国権の最高機関」である国会が動くべきである。

 首相の外交日程は今後もめじろ押しだ。大型連休中は中東歴訪、連休明けに日中韓首脳会談、ロシア訪問、そして6月上旬にはカナダで主要国首脳会議(G7サミット)と続く。

 国民からの信頼が揺らぐ政権が、外交で顕著な成果を上げるのは難しいだろう。そもそも外交の得点で内政の失点を取り戻そうとする発想に無理がある。

 首相自ら先頭に立って国民の疑問に答え、不信を解消しない限り、政権浮揚はあり得ないと心得るべきではないか。

=2018/04/21付 西日本新聞朝刊=

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