過疎集落、苦渋のダム容認 諫早市富川、上大渡野の水没予定地 「建設見越し耕作放棄」

西日本新聞

 本明川ダムが建設される諫早市富川町、上大渡野町は市北部の山間地。本明川と支流沿いに集落が点在し、水没予定地には現在、21世帯が暮らす。

 「限界集落も通り越した過疎状態ですよ、ここは」。水没予定地に住む宮本幸治さん(57)は農作業の手を休めて自嘲気味に語った。周囲には田畑が広がるが「ダム建設を見越して後継者がいなくなり、ほとんどが耕作放棄地」という。集落ではかつてミカン栽培が盛んだったが、生産者の減少とともにイノシシの被害も増え、宮本さんも7、8年前から手を付けていない。ダム建設予定地の下流にある畑も工事が始まれば水路が閉じられるため、作付けは今年限りの予定だ。

 ダム建設計画が浮上した1983年以降、地元では諫早大水害の記憶が生々しかったこともあり、反対運動はこれまで起きていない。地権者や周辺住民でつくる対策協議会の会員数は現在159人。会長の藤山徳二さん(70)は「民主党政権が脱ダムを打ち出したときは『ひょっとして中止になるのでは』と心配した。住民は苦渋の決断でダムを受け入れたので、国は地域振興策をきちんとした上ですみやかに事業を進めてほしい」と話す。

 本体工事に向けて国が今年2月に付け替えに着手した県道は、江戸時代の水害犠牲者を慰霊するため岩肌に彫られた五百羅漢像で知られる富川渓谷に通じる。「付け替えで県道が拡幅されるため、観光客数のアップにつながる」と長崎河川国道事務所。一方、近くでスイトウを栽培する小野勤さん(88)は「ダム湖ができると周辺の気温が下がり、作物に影響しないか心配」と顔を曇らせた。

=2018/04/22付 西日本新聞朝刊=

諫早で本明川ダム着工 治水、諫干と分担不明確 防災“御旗”の縦割り行政

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