【激動 朝鮮半島 私はこうみる】(5)北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長 西岡力氏 拉致解決へ最後のチャンス

西日本新聞

 日米が進めてきた圧力を最大限高めて北朝鮮の政策を変えさせる戦略の第1段階は成功した。だが北朝鮮は過去、譲歩しながらうそをついてきた。これからが正念場の第2段階となる。

 北朝鮮の核や大陸間弾道ミサイル開発は最終段階に入っていたが、まだ完成していない。北朝鮮はそれらの実験中止を宣言したが、米国の軍事圧力におびえた北朝鮮は昨年11月のミサイル発射実験の時点で、これ以上実験しないことを決めていた。国内向けの言い訳として、完成していない核ミサイルを「完成した」と言い募ったのだ。今回の宣言もその延長線上にある。

 トランプ米大統領は米朝首脳会談の開催合意後、強硬派のボルトン氏を大統領補佐官に起用した。ボルトン氏は、北朝鮮の非核化は核兵器や関連施設を全て米国に運んで廃棄するリビア方式でなければ駄目だと言い続けている人物。彼は日本の拉致被害者家族とも非常に関係が深く、ブッシュ(子)政権の国務次官だった2003年以来、何度も面会している。家族会にとっては恩人だ。

 もし米朝会談で、トランプ氏が核問題や拉致問題で中途半端に譲歩しようとすれば、ボルトン氏は辞表を出すだろう。そういう人物をわざわざこのタイミングで入れたということは、中途半端な譲歩の可能性は低くなったと私はみている。

 私たちの要求は拉致被害者全員の即時一括帰国。ボルトン氏が満足するような完全な非核化を北朝鮮が受け入れるなら、拉致被害者を帰すことはより容易な決断のはずだ。

 安倍晋三首相は最近、02年の日朝平壌宣言に言及している。平壌宣言では国交正常化後、経済協力をするとなっている。正常化の前提は核問題と拉致問題の解決。仮に米朝会談で核問題の取引が成立しても、拉致被害者全員の一括帰国がない限り、日本は金を出さないとなれば、北朝鮮は拉致問題でも譲歩するだろう。

 家族会はこれまで何度も訪米して要人に会い、拉致問題の深刻さを訴えてきた。その大きな成果の一つが昨年9月、トランプ氏が拉致被害者に言及した国連演説だ。11月のトランプ氏の来日時には面会もした。先日の日米首脳会談でも、トランプ氏は米朝会談で拉致問題を提起すると明言し「拉致被害者を日本に連れ戻せるようわれわれはできることは全てやる」と踏み込んだ。米国の対北朝鮮政策に拉致問題はしっかり入っている。これは安倍首相の努力も大きい。

 拉致被害者の親たちは高齢となり、健康状態を考えれば残された時間は少ない。これが本当に最後のチャンスだ。米国は交渉中止も辞さない厳しい態度で臨んでいる。日米が求める完全な核廃棄に北朝鮮が応じたとき、拉致問題も被害者の全員救出へ向けた重要な転換点を迎えるだろう。 (聞き手は江藤俊哉)

 にしおか・つとむ 筑波大大学院地域研究研究科修了。外務省専門調査員(在韓日本大使館)、月刊「現代コリア」編集長、東京基督教大教授など歴任。麗澤大客員教授。1997年、拉致被害者家族を支援する「救う会」設立に加わり、2010年から会長。62歳。

=2018/04/25付 西日本新聞朝刊=

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