救急車を妨げ、ベビーカー車道に追いやる…5―10分だけ「ちょっと駐車」の大迷惑

西日本新聞

 「ホテル前の歩道が駐車場代わりに使われ、通行できません」-。福岡市南区の50代女性から、特命取材班に無料通信アプリ「LINE(ライン)」でSOSが届いた。市内有数の観光スポットである商業施設「キャナルシティ博多」付近の歩道を車が占有していることが多く、安心して通れないという。さっそく現場を訪ねてみた。

 問題の歩道は、キャナルに隣接する高級ホテル「グランドハイアット福岡」の玄関前にあった。平日昼に取材した際、違法駐車は確認できなかったが、女性が送信してくれた画像には乗用車やバスが歩道上に乗り上げた様子が写っている。ベビーカーを押す夫婦が、やむなく車道を歩くこともあったという。

 ホテルの担当者に話を聞いた。「駐車を見掛けたら注意しますが、お客さんが混み合う時間で目が届かないこともあります」

 玄関前には幅約3メートルのホテル敷地があり、その先に幅約4・5メートルの歩道が広がる。敷地内には大型バスの乗降のスペースがあり、そこが埋まっていれば、歩道上に別の送迎車が止まったり、ホテル内の飲食施設の利用者が一時的に駐車したりすることがあるという。

 取材後、ホテルは一帯に駐車禁止を示すコーン標識や花壇を置き、出入り口のドアマンの指導も強化した。ホテル運営会社の吉田真一常務執行役員は「今後、歩行者に迷惑の掛からないようにしたい」と話した。

防止審議会は15年間“休眠”

 取材班には「JR博多駅前で出迎えのために停車する車に困っている」という声も寄せられた。行政の対策はどうなっているのか。

 「博多駅周辺は『迷惑駐車防止重点区域』になっています」。福岡市生活安全課の永瀬真二課長が説明する。市は1994年、迷惑駐車防止条例を制定。同年に市内の天神、西新両地区を、2002年には博多駅周辺を重点区域に指定し、指導員による監視や声掛けに乗り出した。

 ただ、市南部の外環状道路整備(11年)、都市高速道路の環状化(12年)などで交通事情が変わっても、重点区域はそのまま。見直しを検討する「市迷惑駐車防止審議会」も03年以降、15年間で1度も開かれておらず、“休眠状態”となっていることが分かった。

 「迷惑駐車の様態が変わり、取り締まりにくくなったことが背景にある」。交通計画に詳しい日本大の小早川悟教授が解説してくれた。

 小早川教授によると、バブル期に迷惑駐車が社会問題化し、1990年代に迷惑駐車防止条例を制定する動きが全国の自治体で広がった。その後、駐車場の整備が進み、2006年には警察と民間が連携して違法駐車を取り締まる「駐車監視員」制度がスタート。摘発件数は減ったものの、長時間放置する駐車に代わり、5~10分の短時間駐車が増えたという。

取り締まりは「いたちごっこ」

 「迷惑駐車は渋滞を引き起こし、救急車など緊急車両の通行を妨げかねない」。福岡県警交通指導課の長田昌之次席も頭を抱える。

 県警によると、県内177路線を対象にした路上駐車調査では、06年5月の4048台が、昨年6月には695台と約83%減。駐車違反に関する110番件数も、05年の約3万100件から16年は約1万7900件に減った。改善の兆しはあるとはいえ、件数はまだまだ多いのが実情だ。

 「取り締まりの人員は限られており、根絶は難しい」と長田次席。警察官や監視員が見回れば、一時的に違反は止まる。が、いなくなった途端に違反者が出て、結局は「いたちごっこ」という。長田次席は「取り締まりは最終手段。みんなで違反をなくすという運転手の心掛けが大切です」と力を込めた。

=2018/04/28付 西日本新聞夕刊=

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