【DCの街角から】「特別」「蜜月」に潜む影

西日本新聞

 トランプ米大統領と安倍晋三首相の関係は「特別」「蜜月」-。日本の政府関係者に2人の親密さを尋ねると、大抵こんな答えが返ってくる。

 先週の日米首脳会談はトランプ氏が所有し、「南のホワイトハウス」と自慢する南部フロリダ州パームビーチの高級別荘「マールアラーゴ」が会場だった。政府関係者は、トランプ氏お気に入りの場所に2度も招かれた外国首脳は首相以外にいないことこそ「特別待遇の証拠」と胸を張り、会談でも「トランプ氏から首相への特別な配慮がにじみ出ていた」と振り返る。

 確かに、2日間で計11時間も首相と一緒の時を過ごしたトランプ氏は「シンゾーはとても非凡な指導者だ」と惜しげもなく持ち上げた。米政府幹部は2人がゴルフのチーム戦で勝ったと紹介し「日米同盟の力だ」とアピールした。冗談交じりとはいえ、2人の蜜月ぶりを伝えたがっていたのは間違いない。

 記者会見場の隅には報道陣用にコーヒーや軽食が用意してあり、そこには日米両国の国旗が描かれた直径約5センチのカップケーキが振る舞われていた。臨時の記者証にも日米の国旗の写真が付けられるなど、米政府による友好ムードの演出が、随所に垣間見えた。

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 とはいえ、そうした両首脳や日米関係の評価を、額面通りに受け止める気にはなれない。

 会談では日米2国間の自由貿易協定(FTA)を巡る対立が浮き彫りになったが、日本政府は記者団に「大統領から『FTA』という言葉は出なかった」と言い張った。トランプ氏がかねて「貿易協定は2国間がいい」と主張しているのは周知の事実。それにもかかわらず「FTA」は口にしなかったなどと言って、FTAを避けたい首相との意見の違いを小さく見せようとする説明には無理がある。

 トランプ氏は今週、国賓として訪米したフランスのマクロン大統領を歓待した。手をつないで歩いたり「彼がとても好きだ」と発言したり、まるで子どもがはしゃぐように親密ぶりを示した。特別な存在は首相に限った話ではないのだ。

 「これからもずっと日本が特別扱いされ続けると過信しない方がいい」。ある米政府当局者はトランプ氏がいずれ、通商問題で譲歩姿勢を見せない首相を突き放すと分析する。日本側はそれが分かっているからこそ「日米は特別な関係」と、あえて強調し続けざるを得ないのが実態ではないか。

 最近、ワシントンの日本事情通は安倍政権の不祥事が続く現状に「次の首相は誰が有力か」と聞いてくるようになった。「特別だ」「蜜月だ」と安穏としている場合ではない。 (田中伸幸)

=2018/04/28付 西日本新聞夕刊=

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