新卒 若松再生に挑む 広島出身前田さん、団体職員に「人情に魅せられ」

西日本新聞

 北九州市若松区で空き家の再生などを手掛ける一般社団法人「ワカマツグラシパートナーズ」が今春、初めて新入職員を迎えた。広島市出身で、この春に北九州市立大を卒業した前田将宏さん(22)。学生時代に若松の人情に触れ「この街のために働きたい」と他社の内定を断って決断した。人口減少、中心市街地の空洞化…。多くの地域と同様に抱える課題は重いが「若松に活気を呼び込みたい」と意欲を燃やす。

 前田さんが若松に住み始めたのは大学3年だった約1年半前。生活費を抑えるため、空き家だった一軒家を友人3人と借り、大学がある同市小倉南区から引っ越した。家賃は光熱水費を含め、1人2万円以下になった。住んでみて驚いたのが周囲の人たちの温かさだった。近所のおばさんが「これ食べえ」とおかずを分けてくれた。電気を消し忘れて寝ると翌朝、様子を見に来てくれたこともあった。なぜそこまでしてくれるのか-。ある日、おばさんの一言で気付いた。「空き家に人が入ってくれてうれしい」。若松が抱える課題も見えた気がした。

 全国の市町村で人口減少数が最も多い北九州市。空き家率も14・3%(7万1160戸)と政令市で3番目に高い。若松区も4月の推計人口は8万1029人で、ピークの1963年から2割減。市街地も空き家が目立つ。

 就職活動で大手人材派遣会社など5社から内定を得た前田さん。それでも「仕事があれば住み続けたい」と若松への思いは断ちがたかった。そんな時、「パートナーズ」理事の藤田毅さん(39)が「うちで働かないか」と声を掛けた。

 「パートナーズ」は地元まちづくり団体が昨年8月に一般社団法人化し、設立された。空き家をリノベーション(大規模改修)してバーや雑貨店にするなど、試行錯誤を続けてきた。藤田さんは日頃から、地域に溶け込む前田さんの姿を見ていた。

 他社の内定を断り「パートナーズ」に入った前田さんは今、3人の理事を除く唯一の職員として、空き家を再利用したゲストハウスの運営を任されている。4月は外国人や家族連れなど20日間の貸し出しがあり、利用は好調だ。

 「若松に移住したと言うとすごく不思議がられる。若松に住む若者をもっと増やし、珍しくない存在になりたい」。人情に魅了され、この街で社会人生活のスタートを切った前田さんの決意だ。

=2018/04/30付 西日本新聞朝刊=

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