【産業医が診る働き方改革】<11>災害時にも健康確保

西日本新聞

 今月で熊本地震から2年、7月には九州豪雨から1年がたちます。日本は災害の多い国だとあらためて感じます。

 災害発生時、避難所で不自由な生活を余儀なくされる住民、緊急招集された医療チームの姿がよく報道されます。私たち産業医が気に掛かるのは、その背後で献身的に働く自治体職員や、復旧に励む企業の従業員たちの健康と安全です。

 大規模な自然災害に見舞われた自治体の職員は、自身も被災者であるにもかかわらず、避難所の対応と本来の業務に追われ、不眠不休の状態になることもあります。ストレスが大きい避難所生活で不満や不安が募った避難住民から厳しい言葉を投げ掛けられることも多く、体を壊したり、心を病んだりする職員も必ずと言っていいほど出てきます。それなのに不満を言わず、高い使命感で働く方々にはいつも頭が下がります。

 一定規模以上の組織は産業医を置く義務があるため、普段から産業医や保健師による健康管理が行われています。災害発生時もさまざまな形で健康・安全面のサポートが受けられます。

 例えば、地震に襲われたA市では、産業医と保健師のチームが各職場に足を運び、病気やけがの恐れがないかなどを確認しました。外部の専門家の力も借りながら一人一人を面接して、心理的異変もチェックし、大きなダメージを受けている職員は医療機関を受診させました。復旧作業を急ぐB社では産業医が中心となり、持病のある従業員がきちんと治療を続けられているか、確認を徹底しました。

 しかし、規模が小さい自治体や企業ではそうはいきません。東日本大震災に伴う原発事故の際、複数の町の職員が、自衛隊員や消防隊員に比べて貧弱な放射線防護装備のまま、住民の避難支援に従事しました。熊本地震のときも、ある町の職員たちは長時間労働が続き、少し落ち着いてきたのは3カ月が過ぎた頃だったようです。

 災害は備えが大切です。災害時に被害を最小限に抑え、事業を継続させる計画に、働く人たちの健康と安全を守る対策は盛り込まれていますか。

(森晃爾(こうじ)=産業医大教授)

=2018/04/23付 西日本新聞朝刊=

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