“野呂文学”の魅力発信14年 手作り季刊誌「諫早通信」全53号をネット公開 市川森一氏ら寄稿者多彩

西日本新聞

 長崎県諫早市を拠点に活動した芥川賞作家、野呂邦暢(くにのぶ)(1937~80)のファンの交流の場として2004年から同市で発行されてきた季刊誌「諫早通信」のバックナンバー全53号がインターネットで読めるようになった。市芸術文化連盟が4月下旬からホームページ(HP)で公開。ゆかりの人々が年4回、手作りで編集してきたA4判数ページの会報だが、同郷の脚本家、故市川森一氏など多彩な作家や研究者も投稿しており、野呂文学の魅力を見直すきっかけになりそうだ。

 創刊は、野呂の諫早高美術部の先輩で、初代編集長の西村房子さん(85)=同市=が「野呂さんの業績を広く知ってほしい」と呼び掛けたのがきっかけ。連盟が発行のための基金を設け、創刊号から52号までは毎回千数百部を印刷して市内の図書館などで無料配布してきた。編集長が西村さんから元高校教諭の古賀順子さん(66)=同=に交代した今年2月発行の最新号からは「デジタル版」として連盟のHPに掲載しており、バックナンバーも公開することにした。

 毎号、野呂のエッセーや全国の愛読者から届いた便りなどを掲載。西村さんらが原稿を依頼し、野呂文学の魅力や思い出をつづった寄稿者には多彩な顔ぶれが並ぶ。芥川賞作家の青来有一氏や堀江敏幸氏、元文芸春秋出版総局長の豊田健次氏、エッセイストの岡崎武志氏、詩人の椎窓猛氏…。市川氏は20号に寄せたエッセー「会いたかった人」で、生前の野呂と会う機会がなかったことを悔やみ「(野呂が構想していた)島原の乱(の小説)を読みたかった」とつづった。

 「寄稿者の多彩さが野呂文学の奥の深さを物語る。ネットを通じて、これから野呂文学に出合う研究者や若い読者にも諫早通信を読んでほしい」と古賀さん。

 生涯の大半を母親の実家がある諫早市で過ごし、「諫早菖蒲(しょうぶ)日記」「落城記」など故郷を舞台にした多くの歴史小説やエッセーを発表した野呂が42歳で急逝して38年。西村さんは「野呂さんが諫早の歴史や文化を掘り起こし、丁寧な文章で紹介してくれたことで私を含む多くの市民が古里を好きになった」と話す。今年も5月27日に同市美術・歴史館で野呂を顕彰する「菖蒲忌」が営まれ、全国からファンが訪れる。

=2018/05/01付 西日本新聞朝刊=

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