<5>「出すぎたくい」目指し

西日本新聞

 熊本市議会の1人会派「和の会くまもと」の控室にはベビーベッドが置かれている。新人市議の緒方夕佳(42)は、ここで夫やベビーシッターに1歳の長男を預けて議場へと向かう。

 国連職員などを経て2015年に初当選。市議会で初となる任期中の出産を経験した。昨年11月、長男を抱いたまま議場に入り、本会議開会が遅れて議論を呼んだ。「子育てしやすい世の中を目指す声が、かき消されないように体現する」ことが目的だった。

 この行動に賛否のメールや電話などが毎日数百件届いた。女性の電車運転士からの「『これだから女は』と言われる。大変迷惑、腹立たしい」という批判は、覚えるくらい何度も読み返した。

 市議会は今年3月、議員以外の議場入場を制限できるように会議規則を改正した。議員活動と子育ての両立の議論はなかなか進まないのに、「対抗策」はすぐに決まった。

 それでも一歩前進した手応えはある。激しいバッシングを経験し、たどり着いた境地。「出すぎたくいは打たれない。そうなりたい」。目指す政治家像が明確になった。

    ■    ■

 佐賀県武雄市議の猪村利恵子(55)は定例市議会での一般質問を欠かしたことがない。その中で同僚の男性議員から飛んだ忘れられないやじがある。

 男女共同参画社会に言及した時だった。「家でも母ちゃんが強かもんなあ」。発言の中身を聞かず、ちゃかす言葉にがくぜんとした。「私が男性だったら同じことをしただろうか」

 14年の市議選で当選した女性は2人だけ。猪村は一般質問で市教育委員に女性を増やすよう求め、実現させた。「女性議員政策研究会」に参加し、県内の他の女性議員とも連携を深めている。

 目立つ議員の宿命か。一般質問で教育問題を取り上げた後、市内のスナックで、酔った学校関係者に絡まれ「姉ちゃん、あんたおかしかばい」と暴言を浴びた。

 06年に1市2町の合併で誕生した武雄市。旧北方町に住む猪村が、出身地の旧山内町の会合であいさつしたら、地元の男性議員に「ルール違反やろうが」とかみつかれた。

    ■    ■

 今月1日に告示された武雄市議選。立候補した24人の中で女性は猪村だけだった。地域活動に積極的な親しい女性に出馬を持ち掛けてみたが「議員は絶対いや」と断られた。

 約100人が集まった出陣式で、猪村は「女だから(1票を)入れてください、そうじゃないんです。市民派の議員になりたい」と訴えた。4位で再選。1399票を集めた。

 10日、当選証書を市役所に受け取りに行った猪村は、玄関で見ず知らずの高齢男性に「女性はおらんばいかんもんね」と激励された。

 総務省によると、昨年12月末時点で九州7県の全地方議員に占める女性の割合は9・1%。「女性が(議員に)出てくるような雰囲気をつくれれば」。新人議員を卒業した猪村の2期目が始まった。 (敬称略)

=2018/04/22付 西日本新聞朝刊=

PR

連載 アクセスランキング

PR

注目のテーマ