<6完>「風」にらみ打算と結束

西日本新聞

 風向きは確実に変わったという実感がある。悪い方に。

 「安倍政権、どう思いますか」。自民党の新人県議は最近、有権者にあえて尋ねる。「あまりに不誠実」。3年前、県議会へと押し上げてくれた追い風は、ぴたりとやんだ。

 財務省の「森友学園」文書の改ざん。首相の安倍晋三が関与を否定する加計(かけ)学園の獣医学部新設…。問題の深刻さに比べてトップの態度が横柄に映る。財務相の麻生太郎は官僚の責任だと強弁した。「うみを出し切る」と言う安倍の言葉は人ごとのように聞こえる。「裸の王様。疑惑にまるで答えていない」

 先輩県議たちの見方も厳しくなってきた。「支持率は落ち切ると回復しない。その前に総辞職を」「このままでは来年春の県議選は戦えない」。1年後のことは想像もしたくない。

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 朝夕のつじ立ちに、あいさつ回り。投開票日まで1カ月を切った熊本県菊池市議選。再選を目指す出口一生(60)は最近、全く知らない有権者から声を掛けられた。

 「ああ、立憲に入ったつかい」。その感心するような表情に、小さな手応えを感じる。立憲民主党には2月に入党した。各種世論調査では、自民に次いで支持率が高い。

 1月までは民進党に所属した。昨年10月の衆院選で、党代表だった前原誠司が希望の党への合流を表明するのを見て「自己保身にあきれ果てた」。市議選を前に、見切りを付けた。

 民主党時代を含め党員歴は約20年に及ぶ。思えばこれまで国会議員と中央政局に振り回されてきた。過去4度の落選では、民主党の偽メール問題のあおりを食ったこともあった。

 市議選は5月13日に告示される。出口は立憲民主の公認になる。「少しでもプラスになれば」と期待を抱く。

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 地縁、血縁が色濃く反映される地方議員選も国政の動向で風向きは順風にも逆風にもなる。日ごろの議員活動でも、所属政党の影響は大きい。

 定数86のうち40議席を占める福岡県議会の最大会派、自民党福岡県議団。議長など主要ポストを握り、新規施策の説明など執行部の根回しでも優遇されるが、新人は会派内で「ぞうきんがけ」を求められる。

 飲み会には先に到着し、先輩議員を出迎える。定例議会の会期中は予定がなくても早めの登庁が暗黙のルールだ。「もっと汗をかけ」。先輩が新人の尻をたたく。内向きの序列と規律が、国政から地方に連なる党の結束を高める。

 新人の福岡市議は「政党に所属すると、議員個人の経験や良識で判断できなくなる」と言う。中央の対立構図や政局的な思惑が、地方から政策論争の活力を奪っていないか。政党がもたらす負の側面が気になる。

 統一地方選まで、あと1年。多くの新人議員が再選を目指し、有権者の審判を受ける。地域と向き合い、「風向き」に目を凝らし、自分の足でゴールに向かう。 (敬称略)

 =おわり

=2018/04/23付 西日本新聞朝刊=

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