「ドザえもん」不適切? 福岡市のアートイベント 市民の指摘で作品名を黒塗り ネットで話題に

西日本新聞

岡本光博さんの作品「ドザえもん」 拡大

岡本光博さんの作品「ドザえもん」

作品解説では「ドザえもん」というタイトル部分が黒塗りされていた=3月31日、福岡市中央区の福岡城跡

 この春、福岡市の福岡城跡で開かれたアートイベントで、美術家の岡本光博さん(49)=京都市=の立体作品が題名を伏せて展示された。隠された題名は「ドザえもん」。「美術作品のタイトルを黒塗りするのは前代未聞では」との声が特命取材班に寄せられた。イベントの裏側で何があったのか。

 作品「ドザえもん」は岡本さんの代表作の一つ。人気アニメのキャラクターを想起させる青い人形が、うつぶせに倒れている。「溺死者の遺体」(広辞苑)を意味する「土左衛門(どざえもん)」からもじった。「言葉遊びがメインテーマ」と語る岡本さんは、だじゃれやユーモアを交え、時には著作権侵害が心配になる作風で現代社会を映し出す。

きっかけは匿名の電話 九州で続発の「災害」考慮

 イベントは花見シーズンに合わせ、福岡城跡の各所に国内外の美術家6人の作品を並べる「福岡城まるごとミュージアム」の一環で、3月30日~4月8日に開催。江戸時代に建てられた櫓(やぐら)の中に置かれる形で、事前に配布されたチラシにも「ドザえもん」という題名と写真が載った。

 実行委員会事務局の市文化振興課によると、題名を伏せたきっかけは匿名の電話だった。「『ドザえもん』という言葉は不適切では」-。イベントの準備が進む3月13日のことだ。

 「土左衛門」の語源は、水死体を巨漢力士に例えた江戸時代にさかのぼる。事務局は過去に「ドザえもん」を展示した全国の施設に問い合わせた。同様の苦情は確認できなかったが、九州で自然災害が続いたことを踏まえ、岡本さんに題名変更を要請したという。

 岡本さんの作品にとって題名は重要な要素なので変更は難しい。岡本さんは「チラシを見た子どもたちが見に来るだろうから作品はあった方がいい」と考え、やむなく題名を伏せた。岡本さんを招いた福岡市美術館の学芸員とも相談し、題名が書かれたライトボックスには布を掛け、解説パネルの題名部分は「伏せられている事実をあえて出す」(岡本さん)ため黒塗りにして開幕に間に合わせた。

息苦しい時代「表現を閉ざすのは良くない」

 イベント会場では布や黒塗りの理由は説明されていなかった。一部メディアが報じ、インターネットを中心に話題に。その後、事務局には「作品が不適切」といった苦情が電話とメールで1件ずつあったという。

 岡本さんは過去に、沖縄県であったアートイベントで米軍機の墜落事故をモチーフに描いた「落米(らくべい)のおそれあり」を出品。地域活性化の趣旨に合わないとして地元自治体の反対を受け、期間中の大半で非公開とされた経験がある。「一方的な見方だけで表現を閉ざすのは良くない。息苦しい時代だからこそ、アートが社会を揺さぶれることも知ってもらいたい」

 福岡市美術館の担当者は「市民の指摘を重く受け止めた。配慮すべき言葉を使わずに、どんな展示ができるのか。作家と学芸員がアートの現場でやりとりして対応できた」と振り返る。

 ここ数年、九州では豪雨など自然災害が続き、爪痕は地域のあちこちに残る。一方、自由な発想が許されるからこそ、アートは強いメッセージを放つ。今回はぎりぎりのところで着地点を見つけたということか。

 題名が黒塗りになった「ドザえもん」は結果的にクイズのような展示になり、楽しんだ来場者もいただろう。それもまたアートの面白さなのかもしれない。

=2018/05/08付 西日本新聞朝刊=

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