【DCの街角から】日米牛肉摩擦、再び?

西日本新聞

 「1ポンド5・99ドル」「7・99ドル」-。自宅の郵便受けに入るスーパーの広告に、こんな数字が並ぶ。目玉商品の定番、牛ステーキ肉だ。約454グラムで650~870円は外食よりお得。料理が苦手な私でも、少しくらい失敗してもおいしくいただけるので、たまに買って焼く。

 その米国産牛肉だが、2017年の輸出額が過去最高を記録した。最大輸出先である日本向けは前年比25%増えたという。

 日本への輸出には38・5%の関税がかかり、ホルモン剤の使用を不安視する消費者も少なくない。それでも好調な背景には、価格の安さや「赤身肉ブーム」といった要因のほかに、米側が日本市場の開拓をしたたかに進めている側面もあるらしい。

 この春、オハイオ州にある牛肉ブランド「サーティファイド・アンガス・ビーフ」の普及団体を訪れた。海外市場担当のベッドナー氏に聞くと、国内外の消費者がどんな牛肉を好むか把握するため、日本などに事務所を置き、ソーシャルメディアでも牛肉に関連する発信データを集積。「分析結果を契約先の畜産農家と共有し、品質改善につなげている」と胸を張った。

 例えばホルモン剤への懸念に対して、ベッドナー氏は米国人が同じものを食べても何ともないし、科学的な根拠もないと一蹴する半面、「消費者の声を反映してホルモン剤不使用の牛肉も生産している」。日本でも人気になった熟成肉など、新たな好みへの対応も万全という。

    ☆    ☆

 実は米国内の牛肉消費量は下落傾向で、植物性原料で風味や食感を作り出す「人工肉」が注目されていたりする。これに対して牛肉業界は、20年の東京五輪もにらみ、外国人観光客の増加が見込まれる日本市場はさらに拡大するとみている。だからこそ対日通商政策に対する関心は高く、環太平洋連携協定(TPP)の行方には特に敏感だ。

 発効すれば将来、オーストラリア産などの関税は下がり、TPPに入らない米国産は価格競争で負けてしまう。こんな懸念は牛肉に限らず他の農業団体からも噴出。トランプ支持層が多い業界だけに、TPP復帰も含めた対策を急ぐようトランプ大統領を突き上げる動きが最近目立つ。トランプ氏としても「信任投票」となる11月の中間選挙が半年後に迫り、業界団体の声はますます軽視できない。

 日米の通商政策協議について日本は今のところ、のらりくらりと先送りを図っているが、トランプ氏が業を煮やし、なりふり構わぬ要求を突き付ける日は、そう遠くないかもしれない。

 「競争条件のハンディをなくせ」。ベッドナー氏も口にした業界の訴えを、トランプ氏がそっくりそのまま主張する姿が目に浮かぶ。 (田中伸幸)

=2018/05/12付 西日本新聞夕刊=

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