副業・兼業 働き手本位の制度整備を

西日本新聞

 日本では多くの企業が「副業・兼業」を原則禁止している。しかし最近、このルールに大きな変化が起きている。

 今の仕事を辞めずに新しいスキルが身に付き、所得増にもつながる-と副業や兼業を希望する人が増加し、解禁する大手企業も徐々に増えてきたからだ。

 厚生労働省も今年1月、企業が就業規則を制定する際のひな型となる「モデル就業規則」で副業や兼業を原則認める方向を示すとともに、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」も作成して公表した。

 他方、今の労働法制下で副業や兼業を拡大させれば、長時間労働や過重労働を助長するとの懸念も強い。労働時間の把握や社会保険の扱いなど難しい問題もある。働き手本位の制度整備を着実に進めていきたい。

 副業・兼業は、昨年3月の「働き方改革実行計画」に普及と促進が明記され、新たな働き方と注目されている。政府の狙いは、多様な働き方の実現と、副業解禁による人材の流動性向上だ。有能な人材を成長産業に振り向け、新事業創出や潜在的創業者の増大も目指している。

 既に社員の副業を解禁した企業はロート製薬、ソフトバンク、新生銀行、ユニ・チャームなど多様な業種・業界に及ぶ。

 副業は労働者にとっては、収入増のほか、社外でスキルや経験を得ることで主体的なキャリア形成と自己実現が可能だ。また、仕事を辞めずに起業や転職に向けた準備もできる。

 一方、企業にとっては、副業を行う人材が社外の知識やスキル、人脈をもたらすことで、事業機会の拡大や技術革新につなげることも可能という。

 とはいえ、副業・兼業を認める企業はまだ少数派だ。リクルートキャリアの調査によると、容認・推進する企業は約23%で、禁止は約77%だった。禁止の理由は「社員の過重労働」「情報漏洩(ろうえい)リスク」が多かった。

 副業・兼業の普及に当たっては労働時間をどう把握するか、健康上の問題は本業の会社と副業会社のどちらの責任なのか、情報漏洩を防ぐ対策をどうするか-など課題は多い。

 まず長時間労働につながらないよう国会で「時間外労働の上限規制」を十分審議し適切に規制することが不可欠だ。副業の推進を非正規社員の増加に結び付けない工夫も求められよう。

 現行の労働法制は、概して一つの会社で勤め上げることを前提とする。これに対し、自身の能力を一企業にとらわれずに幅広く発揮したい-と希望する働き手は着実に増えている。副業・兼業を認めるなら、働き方改革の一環として労働者本位の仕組みを整えていくべきだろう。

=2018/05/19付 西日本新聞朝刊=