「小池さん」が語るラーメン

西日本新聞

 日清食品の創業者・安藤百福(ももふく)氏(1910~2007)が、インスタントラーメンの草分けとなる「チキンラーメン」を開発、発売して今年で60年となる。世界中のラーメン愛好者にとって記念すべき年だ。

 そこで、あの有名な「ラーメン好き」に「私とラーメン」について語ってもらおうと思った。杉並アニメーションミュージアム(東京都)の鈴木伸一館長だ。

 え、そんな人知らない?いやいや、あなたの記憶にはきっと、この人がラーメンを食べる姿がインプットされているはずだ。

 実は鈴木さん、藤子不二雄の漫画作品にしばしば登場する「ラーメン大好き小池さん」のモデルとなった人物なのである。

   ◇    ◇

 鈴木さんは長崎市生まれの84歳。お元気である。

 漫画家を志して山口県から上京、新進漫画家の集まるトキワ荘に入居した。入居者の藤子不二雄(安孫子素雄氏と藤本弘氏)、石森(石ノ森)章太郎氏、赤塚不二夫氏らとともに、描き、食べ、議論し、遊んだ。

 鈴木さんは子ども時代に見た米国製アニメの感動が忘れられず、アニメ制作の世界へ。1963年にアニメ制作会社「スタジオ・ゼロ」を設立し、日本のテレビアニメの創生期をリードした。

 -「小池さん」として登場するのは、この頃の鈴木さんですね。

 「アシスタントが『オバケのQ太郎』に鈴木さんが出てますよ、と教えてくれた。僕には一言の断りもなし(笑)。最初は名前がなくて、ラーメンを食べようとしているとQちゃんに邪魔される、という役。そのうち表札に『小池』と出てきた。当時僕が小池さん宅に下宿していたから。それであのキャラクターも『小池さん』で定着した」

   ◇    ◇

 鈴木さんの当時の写真を見ると、もじゃもじゃ頭に黒縁めがね。「小池さん」のイメージそのままだ。

 -本当にラーメンばかり食べてたんですか。

 「初めはトキワ荘の裏のラーメン店から出前を取ってたんだけど、そのうちインスタントラーメンになった。当時のアニメづくりは試行錯誤の繰り返し。忙しくて口寂しい時に、簡単に食べられて便利だった。それに面白かった」

 -面白かった?

 「そう、お湯をかければ食べられるっていうのが。僕らアニメ制作者とか漫画家とか、みんな新しいものが好きだから」

 -ラーメンって、忙しい人の味方ですね。

 「忙しかったりお金がなかったり、そういう人も簡単に食べられる。だから世界に広がったんじゃないかな。日本の偉大な発明ですよ。(開発者の)安藤百福さんって偉い人ですよね」

 日本発の創意工夫が、庶民に受け入れられ、そして世界に広がっていく。それってラーメンもアニメも同じだ、と取材の帰り道に気付いた。インスタントラーメンを開発した安藤氏と、それを食べながらアニメを作っていた鈴木さん。湯気の向こうに「戦後日本のものづくり」が見える。

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 NHKは10月から、安藤百福氏とその妻仁子(まさこ)さんをモデルとした朝の連続ドラマ「まんぷく」を放映する。面白そうだ。

 どこかで「小池さん」を登場させてくれないか。

 (論説副委員長)

=2018/05/20付 西日本新聞朝刊=

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