タイ、軍政首相の続投へ布石 クーデターから4年 親軍政党続々、連立探る

西日本新聞

 2014年5月のクーデター以降、タイで軍が実権を握って22日で4年となる。政治活動は禁止され、国民の基本的な権利も制限されたままだ。軍出身のプラユット暫定首相は来年2月までに民政復帰に向けた下院総選挙を行うと約束したが、首相続投に向けた動きも活発化している。 (バンコク浜田耕治)

 「タイには政治活動の自由がない。誰かが声を上げなければと思った」。タイの最高学府であるチュラロンコン大3年のウィランパットさん(22)は4月、仲間とともに、演説後のプラユット氏に向けて「独裁者」と書いた紙を掲げた。

 すると翌朝、異変が起きた。バンコク近郊にあるウィランパットさんの実家に2人の私服警官が現れたのだ。家にいた母親に「誰がバックにいるのか」と何度も尋ね、丁寧な口調で「今度やったら娘さんを逮捕する」と告げたという。

 「明らかな脅し。若者が政治を変えるために行動しなければ、彼らの思うつぼになる」とウィランパットさんは憤る。だが軍政の念頭にあるのは、プラユット氏が総選挙後も首相を続投するシナリオだ。「そのための布石を軍政は次々と打っている」とタイ政治の専門家は指摘する。

■非議員首相可能に

 昨年4月に施行された新憲法は非議員の首相就任に道を開き、プラユット氏の再登板を可能にした。政党が事前に提出した候補者リストから首相を選ぶ場合は、上院(250議席)と下院(500議席)の過半数(376人)の賛成が必要。上院議員は軍政が全員任命するため、軍が影響力を行使できる仕組みだ。

 「親軍」政党の設立の動きも相次いでいる。パイブーン元上院議員が率いる新政党は、プラユット氏について「全ての資質を持ち合わせている」と持ち上げ、首相続投の支持を表明した。他にも有力な親軍政党が発足を準備中という。

 政権発足後に法案を通過させたり首相不信任案を否決したりするためには、下院で過半数の議席が必要。軍政は親軍政党を足がかりに、他の政党との連立工作を進めるとみられる。

■総選挙延期懸念も

 ただし、軍政の思惑通りに事が進むかは流動的だ。

 鍵を握るのはクーデター前に野党第1党だった民主党だ。軍と太いパイプを持つとされるが、党首のアピシット元首相は4月1日、「プラユット氏の続投を支持する者は民主党にはいらない」と発言。軍政との連携を否定した。

 一方、軍政と敵対するタクシン元首相派のタイ貢献党は、東北部などで根強い人気を保つ。軍政は巨額のインフラ整備などを約束する「アメ」を駆使して支持層の切り崩しを進めているが、下院第1党となるのは確実とみられている。

 政治学者の一人は「確実に勝てる見込みがない限り、軍政は総選挙の延期を繰り返すのではないか」と予測する。学生らのグループは総選挙の早期実施を求めて22日に抗議デモを行い、圧力を強める構え。延命を続ける軍政への不満が過熱する可能性もある。

=2018/05/22付 西日本新聞朝刊=

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