僕は目で音を聴く(6) 慌てて降りたら違う駅

 聞こえないだけに、目が頼りです。でも“使えない”場面が数多くあります。

 例えば電車。関東では電車の中に電光掲示板が設置されていて、次の駅がどこかなどの情報がリアルタイムに表示されていますが、地方ではそもそも電光掲示板がない電車もあります。

 福岡で、人身事故の影響で電車が動けなくなったことがありました。流れる情報は車内放送によるアナウンスのみ。周りの人々の表情やそぶりを見ていると、切羽詰まった状況か、そうでもないか、だいたいは感じ取れます。問題は何分後に動くのか、どんな事故が起こったのか‐。隣の人に聞いて教えてもらうこともできますが「今日はそんな(わざわざ尋ねる)気分ではないなあ」という日も。ちょっと怖そうな人だったら、そもそも聞けませんし…。状況が分からないまま、3時間も待たされたことがありました。

 大混雑になると、視界から窓がふさがって外の様子が見えないので、駅の名前が分からず苦労します。見えたとしても、駅の看板がない場所では同じです。次第に不安になって慌てて降りたら、目的地とは全く別の駅だったことがありました。そんな時、ホームで「間違えた!」と慌てた様子は周囲の人に見せたくないものです。本当は急いでいるのにゆったりと次の電車を待ったり、停車時間が長い電車の時は、別のドアから入ったりします。

 海外旅行中は、目的地の駅がいくつ後なのかもともと分からず、必ず隣に座っている人に近づいたら教えてもらえるようお願いしています。今まで「NO」と断られられたことはなく、とてもありがたいです。

 今はスマートフォンで駅の情報や事故の状況が調べることができ、便利になりました。聴覚障害者にとっても大切なアイテムです。でもスマホをうまく使いこなせない人は同じ悩みを抱えていることでしょう。地方の電車にも電光掲示板が普及するなど、情報が誰にも等しく行き渡るようになってほしいと願います。(サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)

プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。

※平本龍之介さんによる漫画「ひらもとの人生道」第1巻(デザインエッグ社発行)が好評発売中!

=2018/05/17付 西日本新聞朝刊=

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