非核化に北朝鮮軍部が不満 核・ICBMの廃棄先行か 韓国政府系機関の趙漢凡専任研究員が分析

西日本新聞

「金正恩氏は政治生命を懸けている」と語る趙漢凡氏=ソウル 拡大

「金正恩氏は政治生命を懸けている」と語る趙漢凡氏=ソウル

 【ソウル曽山茂志】韓国政府系シンクタンク、統一研究院の趙漢凡(チョハンボム)専任研究員が西日本新聞の取材に応じ、米朝首脳会談へ向け迷走する北朝鮮側の姿勢の背景に、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長に対する北朝鮮軍部の不満があるとの見解を明らかにした。ただ、正恩氏の「非核化」の意思は固いとも指摘。核兵器の国外搬出や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の廃棄という核心部分を先行して実施する方式で米国と合意するとの見通しを示した。

 趙氏は、北朝鮮が今月15日午前に韓国側に提案した南北閣僚級会談を16日未明になって突然、無期延期したことに着目。北朝鮮国営メディアによると、正恩氏は翌17日の党中央軍事委員会で「軍の近代化」に言及し、4月末の南北首脳会談で確認した「軍縮」に反する動きとして注目された。

 北朝鮮軍部では過去、核・ミサイル開発に巨費を投じる指導部に不満を表した幹部が処分されたことがある。趙氏は、兵士の食料費さえ削って開発した核兵器の放棄を正恩氏が決断したことに軍強硬派の不満が高まっている可能性があるとして、「正恩氏は表向き米韓に反発したり、軍拡の意向を示したりして時間を稼ぎながら、軍の統制を図ろうとしている」とみる。

 ただ、トランプ米大統領が突然、首脳会談中止を表明したのは正恩氏にとっても想定外だったとみられ、慌てて韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領に助けを求めて会談を要請。26日の南北首脳会談終了後、文氏と抱き合う正恩氏の表情から「不安が解消されて、満足した様子がうかがえる」と趙氏は話す。

 北朝鮮は4月末の党中央委員会総会で新たに「経済建設」路線を決定。趙氏は、国際社会の制裁で「餓死者も出ている」との見方もある劣悪な経済を立て直すため「正恩氏が『非核化』と引き換えに国際社会と対話するという大きな賭けに出た」と指摘する。

 本格化する米朝の実務協議で最大の焦点となる「非核化」については、完全実施を先行させる「リビア方式」と、北朝鮮が主張する段階方式との折衷案として、「既存の核兵器とICBMという核心部分の廃棄や国外搬出を先行させる方式が有力」とし、米国などがそれを見極めた上で制裁緩和を実施する方向で調整が進むと推測。

 「非核化」の検証については「米韓日など国際社会の検証能力は高く、北朝鮮がひそかに核兵器を保有したり、開発したりするのは簡単ではない」との見方を示した。

=2018/05/30付 西日本新聞朝刊=

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