一から分かる「非核兵器地帯」 条約未批准目立つ米国 広瀬訓・長崎大RECNA副センター長に聞く

西日本新聞

 北朝鮮の非核化に関するニュースでしばしば登場する「北東アジア非核兵器地帯構想」。日本と朝鮮半島域内の非核化を目指すもので、長崎市長が8月9日の平和祈念式典で示す「平和宣言」でも、毎年のように構想の実現を求める内容が盛り込まれる。そもそも「非核兵器地帯」とは、何なのだろうか。同構想を提唱する長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)の広瀬訓副センター長(国際法、国際機構論)に聞いた。

 外務省などによると「非核兵器地帯」とは、特定地域内の国々が核兵器の生産や保有などを条約で禁止するもの。核兵器の開発競争が盛んな1960年代以降、世界各地で条約をつくる動きが相次いだ。

 「条約は数え方にもよりますが、現時点で7地帯(中南米、南太平洋、東南アジア、アフリカ、中央アジア、南極、モンゴル)があります。キューバ危機などを背景とした中南米が最初で、68年に発効しました(表参照)。モンゴルは例外で、国内法で非核兵器地帯と定め、国連総会の決議で承認されました」

 核兵器などの軍事利用を禁じる国際条約がある南極を含め、南半球はほぼ非核兵器地帯になった形だが、条約に実効力を持たせるには「核兵器国」(米国、英国、フランス、ロシア、中国5カ国)の参加が鍵。発効済みの条約をみると、核兵器国全てが批准しているのは中南米のみ。特に米国は南太平洋、アフリカ、中央アジアの条約に、核兵器国で唯一批准していない。

 「核を保有する国の確約を取るには、条約に付属する形でその地域内での核兵器使用や威嚇を禁じる議定書に、核兵器国が署名・批准することが必要です。議定書は条約と同じとみなされます」

 他にも非核兵器地帯をつくる構想があるのは、中東と北東アジア。具体的な議論が行われているのは中東だけだが、イスラエルとイランの核問題があり、実現は見えない。日本が絡む北東アジア非核兵器地帯構想はどうなのか。

 「北東アジアでの構想は、モンゴルやマレーシアなど一部の国が国連や核拡散防止条約(NPT)の会合で『実現の可能性を追求すべきだ』などと言及した程度。国際社会が真剣に交渉や議論をしたことはありません」

 それでも90年代以降、研究者や非政府組織(NGO)が北東アジア構想に言及するようになった。90年代半ばに具体的な枠組みを示したのが、後にNPO法人「ピースデポ」の設立に関わり、2012年にRECNA初代センター長に就いた梅林宏道氏。日本と朝鮮半島が核兵器を生産・保有せず、核保有3カ国(米国、中国、ロシア)が地域での核使用や威嚇をしないと約束する「スリー・プラス・スリー」を提唱した。

 「梅林氏はRECNAセンター長に就き、この構想を長崎大に広めました。梅林氏の考えには昨年亡くなった土山秀夫・元学長も賛同、発信しました。今や『北東アジア非核地帯構想と言えばRECNA』と言われています」

 駆け引きが続く米朝首脳会談やその後の交渉が朝鮮半島の非核化を左右するが、米国の核の傘に頼る日本はどうすべきなのだろうか。広瀬氏は米国に追随してきた日本政府の姿勢をこう否定的にみる。

 「日本は米国から『この構想は北東アジアの安定に有益だし、日米安全保障条約に抵触しないから、安心して参加しなさい』と言われなければ動けないでしょう」

=2018/05/31付 西日本新聞朝刊=

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