僕は目で音を聴く(7) 作り笑顔でこらえることも

西日本新聞

 耳が聞こえない人が聴者(聞こえる人)と飲みに行くとき、退屈だったという声をよく聞きます。聴者もいろんな人がいて、私も退屈だと思ったことがあります。少人数ならコミュニケーションは大丈夫なのですが、大勢だとそうはいきません。

 最初の30分ぐらいは質問攻めにされるなど会話がしやすいのですが、酔いが回って盛り上がってくると、聴覚障害者はその輪に入りにくくなります。一人一人が何を言っているのか、読唇術などで理解しようにも、とても追い付けないからです。

 途中で笑いが起こっても流れが分からない。どうして笑っているのか教えてくれる人もいますが、一から説明してくれるわけではないので、何となく雰囲気を受け止めるしかありません。酔いがさらに回ると早口になったり、聞き返しても気づいてくれなかったりします。

 とはいえ、私はその楽しい雰囲気を壊したくはないので、グッとこらえて周りに合わせて作り笑顔で反応します。こうしたことが嫌なので、最初から飲みの場に行かないという聴覚障害者もいます。飲みの場の難しいところだと思います。

 私は、お互いを知るためにもできるだけ参加した方がいいと考えていますが、参加しやすい環境や雰囲気をどうしたらつくれるのでしょう。やっぱり互いの気遣いが大切なのではないでしょうか。

 前に勤めていた会社を退職することになり、送別会を開いてもらったときのことです。聴者の一人が、自費でホワイトボードとホワイトボード専用のペンをいくつか買ってきてくれて、参加者に回しました。その場では全員が、ホワイトボードに書いてコミュニケーションすることにしました。酔って訳の分からない絵を描く人もいて、大爆笑! その飲み会だけは、最初から最後まで楽しかった記憶が残っています。

 お酒を飲む場は、本当の自分を出せる良い機会となります。たった一人の気配りが飲み会の雰囲気を変えてくれました。(サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)

プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。

※平本龍之介さんによる漫画「ひらもとの人生道」第1巻(デザインエッグ社発行)が好評発売中!

=2018/05/24付 西日本新聞朝刊=

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