「温泉力」を健康づくりに 介護費抑制・病気予防、観光客誘致も 竹田市、独をモデルに

西日本新聞

 地域の温泉を健康づくりに生かし、介護サービス費の抑制や予防医療につなげる自治体の取り組みが始まっている。効能を科学的に調べることでブランド化し、土地の魅力を発信して観光客誘致も狙う。温泉地を抱える地域は多く、同様の取り組みが各地に広がる可能性もありそうだ。

水の浮力で負荷かけず筋力アップ

 竹田市の長湯温泉にある高齢者センターに4月、60~80代の地元女性約10人が集まった。市の保健師の健康チェックを受けた後、浴槽に向かった。

 「次はアキレス腱を伸ばします。しっかり伸ばして! 1、2、3、4…」。指導役の女性が声を掛けた。心臓への負担が少ないという30度ほどの源泉の中で腕を伸ばしたり、歩行したり。水の浮力や抵抗力を利用すると関節に負荷をかけずに筋力を鍛えられる。

 病気療養をしていた80代の女性は久しぶりの参加。「体力づくりにもいいし、何よりみんなに会えるのが楽しい」と顔をほころばせた。

保険適用のドイツをモデルに

 竹田市は、温泉療養を軸に市民の健康づくりや観光振興に取り組む。この日の運動教室も行政主導で始まり、住民が自発的に続けてきたという。

 同市のモデルは温泉療法に公的保険が適用されるドイツだ。2011年度には、対象施設に半年間で3泊以上宿泊すると、市が1泊500円を給付する独自の仕組みを導入。申請者は6年間で延べ4千人近くに達した。

 効能の科学的解明にも意欲的だ。「他とは違う『温泉力』があれば、特色を出せる」と市の担当者。専門家との共同研究では、長湯温泉の炭酸泉を飲むことで糖尿病の予防などが期待できることが分かった。

 今年はクアハウスも完成する予定。同市は60歳以上の住民が半数を占め、首藤勝次市長は「市民に定期的に利用してもらい、介護予防にも役立てたい」と語る。

温泉宿泊者は減少 「新・湯治」を提言

 国も温泉を健康づくりに生かす取り組みを進める。厚生労働省は16年、基準を満たした人が認定施設で療養すると宿泊費などの医療費控除が受けられる制度について、施設の適用条件を緩和。翌年竹田市の施設も認定された。同様に認められた北海道豊富町の温泉はアトピー性皮膚炎などに効くとされ、昨年8月から8カ月間で約130人が制度を利用した。

 15年度の温泉施設の宿泊者数は約1億3千万人。レジャーの多様化や都市部での日帰り温泉の開発が進み、ピークだった20年以上前と比べて約1千万人少なくなった。

 環境省の有識者会議は昨年、現代のライフスタイルに合わせた温泉の楽しみ方を「新・湯治」と名付け、温泉地のあり方を提言。今後滞在効果の検証などを通じ、湯治文化の再構築を目指す。

 東京都市大の早坂信哉教授(温泉医学)によると、日本では温泉は民間療法というイメージが根強く、ドイツやフランスに比べ、最近は温泉効果の科学的調査が少ない。「日本は温泉大国だが、研究費は先端医療につきやすい。科学的根拠を積み重ねていけば、活用の幅を広げていけるのではないか」と話している。

=2018/06/01付 西日本新聞朝刊=

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