平凡な人が抱える罪とは?_「64-ロクヨン」の瀬々監督が新作「友罪」

西日本新聞

少年犯罪者の「その後」を描く

 未解決のまま時効を控えた少女誘拐事件を扱った「64-ロクヨン」(2016年)など犯罪を題材にした映画に定評がある瀬々敬久監督=大分県豊後高田市出身=が再び犯罪と向き合う新作「友罪」を完成させた。「凶悪犯罪を行った友人の過去を人はどう受け止めるのか」が主題だが、元雑誌ジャーナリストの主人公は友人の過去を受け止める中で自身が少年時代に犯したある「罪」と向き合う。監督は「罪の大小に関係なく、ごく平凡な人が普段抱える罪とは何なのかに触れたかった」と語る。

 今回は1997年に起きた神戸の児童連続殺傷事件に着想を得た薬丸岳の同名小説が原作。町工場で働く友人(瑛太)が凶悪な少年事件の犯人だと知った元ジャーナリストの益田(生田斗真)は過去に犯した自分の「罪」と相対する。益田の「罪」は法律で罰せられる罪ではないが、監督は「自分が気にも留めていなかった言動で人を傷つけることはよくある。そうした小さな罪は誰でも犯しうるのでは」と問いかける。

 そもそも罪の大小とは一体誰が決めるのか。

 「普通の人である益田が、友が犯した大きな罪と自分の小さな罪とを、ほぼ等価のように受けとめるところが今作の面白いところ」

 97年当時、神戸の事件が少年による犯行だと監督の耳に入ったのは、ホラー映画「KOKKURI こっくりさん」の公開初日の舞台あいさつ前だった。

 「阪神淡路大震災とオウムの地下鉄サリン事件と並び90年代を象徴するような事件だった」と振り返る。今回の映画は神戸の事件そのものを描いたわけではない。設定は似ているが、登場人物の境遇や造形などは実際の事件とは異なる。事実関係にこだわるよりも、今の時代感覚の中で事件の「その後」をとらえようとした。

 「あの頃はバブル崩壊後の精神的なことを探求する風潮があった。それが今はどうなのか」

 友人が「少年A」だと知った時の益田の反応以上に、その前段となる2人の友情が育まれていくシーンに力を注いだ。今作の白眉ともなった町工場の仲間たちがカラオケで盛り上がるシーン。手持ちカメラの長回しで撮られ、2人の距離が縮まる感じを臨場感たっぷりに収めた。「後半の瑛太君がアニメのドラゴンボールの主題歌を歌うところはフルで3テイクぐらい撮ったかな。あのシーンは、素の生田君が映っている」と手応えを感じている。

 7月には大正末期の「女相撲」の一座と、アナキスト・グループ「ギロチン社」の青年たちを描いた「菊とギロチン」の公開も控える。「64-ロクヨン」以降、興行規模の大きい作品に取り組むことも増えた。「友罪」のように重いテーマで娯楽性は薄めの作品を商業映画として撮れることは「ありがたい」と語る。今後も短い間隔で撮り続けるために「たくさんお客さんに来てもらって、興行的に勝たないと」と笑った。

 ◆映画「友罪」 TOHOシネマズ天神などで上映中。

=2018/06/01付 西日本新聞夕刊(娯楽面)=

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