国内で唯一現存か 潜伏キリシタンの「隠れ部屋」民家の屋根裏に 熊本県天草市

西日本新聞

山下大恵さんの自宅の屋根裏にある「隠れ部屋」 拡大

山下大恵さんの自宅の屋根裏にある「隠れ部屋」

隠れ部屋には「キツネ窓」と呼ばれる小さな窓も 隠れ部屋へつながる階段 隠れ部屋で十字架に祈りをささげる信者たちの姿を再現した天草ロザリオ館のコーナー 天草市天草町大江の天草ロザリオ館。背後に大江教会の上部の十字架が見える。

 江戸時代に建てられた熊本県天草市天草町大江の民家に、潜伏キリシタンが信仰を守るためひそかに設けた「隠れ部屋」が残っている。大江教会など文化的な遺産が多い大江地区は、近く世界文化遺産に登録される見通しの「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本)の構成資産には含まれないものの、専門家は隠れ部屋について「国内に現存するものはおそらくここだけ。貴重で珍しい」と指摘する。

扉で隠された階段を上ると屋根裏へ

 隠れ部屋があるのは、大江教会と海が見渡せる高台の傾斜地にある山下大恵さん(88)の自宅。市の調査によると、建築は1826(文政9)年。一見すると天草地方の典型的な木造家屋だが、扉で隠された階段を上ると屋根裏に信者がひそかに祈りをささげていた部屋がある。

 隠れ部屋の名の通り、突然、誰かが訪問しても、そこに部屋があることを隠せる構造となっている。取り外し可能なはしごがあり、天井部を板でふさぐことができる。「キツネ窓」と呼ばれる小窓は、明かり取りや換気のため設けられたとみられる。

 山下家には、長く大事に保管してきたメダイ(メダル)などが残されていた。先祖は大坂夏の陣(1615年)の落人で、キリシタン。山下さんの父親は隠れ部屋のことを「なんど(納戸)さん」と呼び、「(祈り用具の)ロザリオや鏡で拝んでいた」という。

世界遺産には含まれないが…

 当初、天草市教育委員会は大江地区についても、世界文化遺産の構成資産となる見通しの崎津集落(天草市河浦町)とともに登録を目指していたが、各種の規制が住民側に課せられるとの懸念から地元の同意が得られず、断念した経緯がある。同市世界遺産推進室の丸林真吾室長は「大江地区は崎津集落と同様に貴重で重要な場所。同じように情報発信していく」と話す。

 五野井隆史東大名誉教授(キリシタン史)は、1805年に5千人超の潜伏キリシタンが見つかった「天草崩れ」以降、権力側の監視が強まったことを背景に「(潜伏キリシタンの)信仰、祈りの場を維持したいとの思いの表れだろう。保存が可能であれば、文化財に指定するなどして維持してほしい」と語る。

「ロザリオ館」に再現コーナー

 潜伏キリシタンの家庭が信仰を守るため自宅に設けた「隠れ部屋」。天草市天草町大江の「天草ロザリオ館」には、隠れ部屋を縮小して再現したコーナーが設けられており、和服姿で十字架に祈りをささげる当時の信者たちの人形もある。

 展示品には、隠れ部屋がある山下大恵さん(88)の自宅に残されていた潜伏キリシタンの遺物で、県指定重要文化財の「メダイ」もある。島原の乱で総大将の天草四郎が使ったとされる「陣中旗」(天草キリシタン館所蔵)と同じ絵柄で聖体を拝む2人の天使が描かれている。裏には、ポルトガル語で祈りの言葉が書かれている。天草ロザリオ館=0969(42)5259。

=2018/06/06付 西日本新聞夕刊=

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