参院定数6増案 ご都合主義にも程がある

西日本新聞

 ご都合主義にも程がある。「1票の格差」是正に向けて参院定数を6増やすという。本気なのかと耳を疑いたくなる。党利党略が露骨な定数増など断じて容認できない。撤回すべきだ。

 自民党はきのう、選挙制度改革問題統括本部などの会合で公選法改正案を了承した。この案に公明党は一定の理解を示しつつも議論を続けるとしている。

 どんな案か。参院選挙区の「合区」を維持する一方、比例代表の定数を特定枠として4増する。さらに議員1人当たりの有権者数が最も多い埼玉選挙区の定数を6から8に2増やして、選挙区間の「1票の格差」を是正する-という内容だ。

 特定枠は事前に定めた順位に従って当選者を決める「拘束名簿式」を採用する。自民党は合区対象県で選挙区に擁立できなかった県の候補を特定枠に登載する方針という。

 2016年参院選で「鳥取・島根」と「徳島・高知」に導入された合区に対する自民党の不満は強い。19年の参院選では合区対象県すべてで自民党の現職議員が改選期を迎える。

 その救済策だとすれば、まさに党利党略そのものだ。野党が反発するのも当然だろう。

 「特定枠」という言葉が象徴するように、特定の目的から選挙制度を複雑に変更する発想も安易で乱暴に過ぎる。

 自民党は当初、合区解消を安倍晋三首相の悲願である憲法改正の項目に盛り込んで実現しようとした。森友・加計(かけ)問題などの疑惑解明が進まない中、国会の改憲論議も停滞している。

 このままでは19年の参院選に間に合わない-と焦った自民党が公選法改正の手法に切り替えたとしか思えない。それにしても突如浮上した案である。党内論議を尽くした形跡もない。

 にもかかわらず、自民党は今国会に改正案を提出し、成立を目指すとしている。

 合区導入を決めた改正公選法の付則に、19年参院選に向けて「選挙制度の抜本的見直しについて必ず結論を得る」と明記したことを忘れてはならない。まさか定数増が「抜本的見直し」というのではあるまい。

 大都市部への人口集中が進み、定数がそのままなら「1票の格差」は拡大する。定数を有権者の人口で一律に割り振れば、地方の議席は減るばかりだ。合区に有権者の戸惑いが根強いのも事実だが、定数増は「身を切る改革」に逆行する。

 だからこそ、抜本的見直しが必要なのだ。二院制における参院の役割と機能、議員の選出方法、定数と歳費など与野党で議論すべきことは多い。議会制民主主義の土俵となる選挙制度である。ごり押しは許されない。

=2018/06/07付 西日本新聞朝刊=

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