レイプ被害、実名で告発した思い 伊藤詩織さんに聞く 「忍耐は美徳」の価値観に疑問

西日本新聞

 自身のレイプ被害を基に、被害者を取り巻く法や支援体制の不備を訴えたノンフィクション「Black Box」を昨年出版したジャーナリスト、伊藤詩織さん(29)が西日本新聞の単独インタビューに応じ、セクハラなどの性暴力について「あなたの一番大切な人に起きたと考える想像力があれば、社会は少しずつ変わる」と語った。

 -財務省の前事務次官による女性記者へのセクハラ問題をどう見るか。麻生太郎財務相の「はめられて訴えられているんじゃないか」との発言もあった。

 「今まではセクハラを受けても、声を上げると仕事など被害者の社会的生活が守られないため、沈黙されてきたのではないか。それでも声を上げ、メディアが報じたことはとても大きな一歩になったと思う」

 「大臣の対応は時代遅れ。責任が問われないというのは、海外からは世間が(こうした行為を)許しているとみなされる」

 -伊藤さん自身、名前と顔を明かして告発することに不安はなかったか。

 「仕事がなくなる、日本で生活できなくなるとも思ったが、話すこと、出版することで性被害を巡る刑事司法や支援制度が少しでも変わり、同じ思いをする人が出ないようになることを優先した。でも、家族のことはずっと心配だった」

 -伊藤さんを含め、被害を訴えた側が誹謗(ひぼう)中傷を受ける不条理も起きている。

 「個人が我慢していれば周りが傷つかないのに、という『忍耐は美徳』の誤った価値観があるのではないか。私も、特に女性から批判を受けたときは、ほかのどんなに汚い言葉よりも傷ついた。でも、我慢は誰のためになるのでしょうか」

 -セクハラを告発する「#MeToo」(「私も」の意)運動は米国から世界に広がったが、日本ではそれほど広がりを見せない。

 「海外では『#MeToo』が社会的な問題として認知されたが、日本では個人的な問題とされ、社会的な、人権的な、もしくは自分にも関わる問題だと捉えられていない。想像力に欠けていると感じる」

 「(前次官のセクハラ後)メディアに関わる先輩女性たちが『後輩がこんな目に遭うのは私たちに責任がある。戦おう』と声を上げてくれている。社会は変わりつつあるように思う」

 -被害者が声を上げやすい環境をつくるには。

 「私の場合は何でも話せる友人の存在が大きかった。周りの支援が大切で、その中でもまず話を聞くこと。どんな場所で被害に遭っても、どんな服装であっても絶対に責めてはいけない。『あなたのことを信じる』と言ってほしい」

 「近い将来、性被害を告発したことが称賛されない社会になればいいなと思う。人の尊厳という当たり前のことを話しているだけなのだから」

=2018/06/11付 西日本新聞朝刊=

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