大河ドラマの視聴者がっかり? 「西郷の言葉とは思えない」手紙の内容とは

西日本新聞

 日曜日の夜、テレビで大河ドラマをお楽しみの方は、首をかしげる内容かもしれない。手元に「近世・奄美流人の研究」(南方新社)という本がある

▼筆者の箕輪優さんは鹿児島県名瀬市(現奄美市)出身。定年退職後に大学院に入り、島に流された罪人から奄美の近世史を研究する。調べた流人は300人以上。その中に西郷隆盛もいた

▼ドラマの西郷どんは、島民の温かさに触れて荒れた心を癒やしていく。子どもらには読み書きの手習いを。そしてサトウキビ栽培を強制され、搾取される島民の困窮を目にして義憤を感じる。敬天愛人の人柄を描いていた

▼けれども、と箕輪さんは西郷の手紙を解析する。島民を「けとう人」と呼んでさげすみ、交流も「難儀」「気持ち悪」いと書く。待遇の改善や転居を要求。維新後さえ、奄美の砂糖を引き続き専売制で管理し県の利益とせよ、と指示したそうだ。島の窮状を知る「西郷の言葉とは思えない」と本書で指摘している

▼だから番組はうそだ、と言うのではない。物語は虚実を織り交ぜて進むもの。演出も当然ある。歴史ドラマはあくまで創作として楽しむ目線が視聴者側に必要なのだろう

▼奄美に着いて1カ月。西郷は最初の手紙で「何方においても苛政の行われ…誠に忍びざる次第…」と書いた。早々に島の支配構造を見抜いた眼力を、本書も「大政治家西郷の片鱗(へんりん)」と称賛している。こちらは史実です。

=2018/06/18付 西日本新聞朝刊=

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