大学発ベンチャー 九州の知を起業に生かせ

西日本新聞

 知が集積する大学の研究成果を事業化する「大学発ベンチャー企業(VB)」が存在感を増している。筑波大発で医療・介護向けパワードスーツを開発する「サイバーダイン」、東京大発の医薬品開発ベンチャー「ペプチドリーム」などは、今や有名企業に成長した。

 経済産業省によると、2017年度でその数は2093社と前年度から247社増え、初めて2千社を上回った。業種としては、バイオ、ヘルスケア、医療機器関連やIT(情報技術)関係が多いのが特徴だ。

 イノベーション(技術革新)による経済成長が求められる中で、先進的な研究成果の事業化に対する期待は大きい。新産業の創設、産業の新陳代謝の先導役として育成したい。

 大学での研究成果は学会での発表や論文作成など学術目的に利用されることが多い。大学発VBの創出にはまず、それらの研究から事業化・製品化の可能性がある技術やノウハウを発掘するのが最初の関門となる。

 次いでアイデアや発明に対する市場性を評価し、適切な経営人材を確保することや、事業化に向けた資金調達が重要だ。

 特に研究開発型が中心となるため、事業化には時間も費用もかかるのが通例とされる。

 わが国でも、こうした研究成果の起業化を資金面で支援する官民のベンチャーキャピタル(VC)や投資ファンドが徐々に厚みを増してきた。

 東京大、京都大、大阪大、東北大には大学傘下のVCが誕生し、大学発VBへの投資も始めている。ただし、研究や技術の段階で事業として成算があるかを判断するのが難しいという。

 そうした中で注目されているのが、大学の持つ知的財産や科学技術と、その事業化・商業化への隙間(ギャップ)を埋めるため、試作品の作成や追加試験、市場調査などに資金を供給する「ギャップファンド」だ。

 研究から起業への橋渡し役やVC投資の呼び水になると大学を中心に設置が広がってきた。

 九州でも大学や企業、経済団体などが昨年発足させた「九州・大学発ベンチャー振興会議」が本年度、「ギャップ資金制度」を創設し、地域を挙げて大学発VBの創出を支援している。

 今春、九州大からは特殊なカイコを活用することで、病気の研究試薬や診断薬、ワクチンなどを開発するベンチャーが誕生した。また、崇城大(熊本市)からは、球磨焼酎かすで培養可能な光合成細菌を活用したバイオベンチャーも生まれた。

 九州の大学では、水素、医療、素材、バイオ関連などで優れた研究が目立つ。事業の種を見つけ、大きく開花させたい。

=2018/06/18付 西日本新聞朝刊=

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