<64>指導者はつらいよ…

西日本新聞

●バルセロナ五輪女子マラソン日本代表 小鴨 由水さん

 私の聞き書きにはこれまで、いろんなタイプの指導者が登場してきましたね。熱血タイプが、中学時代の荻野卓(たかし)先生と、ダイハツの鈴木従道(つぐみち)監督。お二人の指導はとにかく厳しく、ダイハツ時代の私は怒られるのが嫌で、わざと鈴木監督の死角になるコースを走ったものです。対照的に、高校時代の中嶋修平先生と、岩田屋の重松森雄監督は、物腰がソフトで、選手に自分から考えさせようとするタイプでした。

 そんな4人には、共通していたことがあります。選手を1秒でも速く走らせたいという「情熱」です。たかが駆けっこに、どうしてそこまで熱くなれるのか。結局は皆さん、陸上が好きだったのだと思います。

 どうして私がこんな話を始めたかと言うと、私は2013年4月、西日本短大に創部された駅伝部の監督に就任したのです。短大は在学期間が四年制大の半分なので、全国大会への出場はかなり難しいです。でも、私は高校卒業から2年で女子マラソン日本最高記録を出しました。やってやれないことはないはずです。

 なんて、勢い込んで監督になってはみたものの、集まった部員は男女各3人でした。これでは駅伝大会には出られません。おまけに6人は皆、短大で陸上を始めた初心者でした。私は部員に陸上の基礎を教える傍ら、福岡県内の高校を回って勧誘に乗り出しました。

 そのかいあって、15年にようやく有望株が1人入ってきました。北九州市立高出身の森歩美さん。まじめで自分の考えをしっかり持っており、高3の時の故障から立ち直ろうともがいていました。私も高3で故障に苦しみましたので、その体験を伝え、「焦らず、まずは持久力をつけよう」と、百道の砂浜を走らせて鍛えました。そうした地道な努力が実り、彼女は17年春、念願の実業団ランナーになりました。夢に向かって頑張ってほしいです。

 残念ながら、皆さんにお話しできる監督・小鴨の実績はこれくらい。慢性的な部員不足で駅伝大会出場はいまだ果たせず、現在の部員は男女各2人です。指導者はつらいよ…ですね。

 それでも、いつか好機が来れば、やってやるぞという気持ちはあります。監督の大切な役割は、選手のモチベーションを上げることと、上手な練習メニューを立ててピークをそこへ持っていくことと学びました。何より、陸上への情熱にかけては、そんじょそこらの監督には負けませんよ。

=2018/06/18付 西日本新聞朝刊=

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