<65>有森さんから贈り物

西日本新聞

●バルセロナ五輪女子マラソン日本代表 小鴨 由水さん

 昨年12月26日、ちょうど私の誕生日に、懐かしい方から宅配便が届きました。差出人は有森裕子さん。「何の荷物かな」と開けてみると、「バルセロナ」の文字が入った鮮やかな黄色のTシャツが入っていました。手紙が添えられていて、バルセロナ五輪25周年イベントにメダリストとして招待された際のお土産とのこと。「あのバルセロナの地を再び走り、小鴨さんとの思い出がよみがえりました」と書かれ、私のことを「戦友」と記しています。

 胸にジーンときました。有森さんは銀メダル、こちらは29位の惨敗でしたが、そうやって気に掛けてくれることが、何よりうれしかったのです。

 有森さんは私より5歳上。初めて会話を交わしたのが五輪前の合同練習でしたが、まさにしっかり者のお姉さんという感じです。怠け者の私と違い、レースが終わった翌日から、4年後のアトランタ五輪を目指して走り込んでいた姿を忘れません。そんな彼女と共に力の限りを振り絞ったあの夏は、私の宝物です。

 それから月日は流れ、私は福岡市で母となります。2002年、大濠公園で有森さんのサイン会がありました。私はまだ赤ん坊の長男をベビーカーに乗せ、順番を待つ列に並びました。ちょっとしたいたずら心ですね。私の顔を見た瞬間、有森さんはびっくり。「えー、小鴨さん。なぜここに並んでるの」。結婚して子どもが生まれたことを説明すると、有森さんは「私は子どもじゃなくて、会社をつくっちゃいました」。

 その会社は「ライツ」という名で、著名なアスリートを集めスポーツビジネスを手掛けているとのこと。私もメンバーに加入しました。今もたまに、講演会のお呼びがかかりますよ。

 次に再会したのは、11年の大阪国際女子マラソン。私は出場者、有森さんは解説者でした。彼女は「ママで走ってるなんてすごいね。私もいつか、故郷の岡山でまたマラソンを走ってみたい」と言っていましたが、その言葉を4年後に実現しました。やっぱりすごい女性ですね。

 有森さんは今、知的発達障害者のスポーツ大会を開く公益財団法人や、カンボジアの地雷被害者に義足を支援するNPO法人のトップを務めています。知的障害者と走る私にとって、とても共感できる仕事です。彼女には、女子マラソンにとどまらず、いろんな活動の「先駆者」として、ずっと走り続けてほしいです。

=2018/06/19付 西日本新聞朝刊=

PR

連載 アクセスランキング

PR

注目のテーマ