福岡刺殺、ネット社会のリスク浮き彫りに 居場所の特定も…書き込みが事件に発展、後絶たず

西日本新聞

 福岡市中央区の創業支援施設で有名ブロガーでもあった男性会社員が刺殺された事件は、インターネット上のトラブルが引き金になったとみられている。ネット上の書き込みが事件に発展するケースは後を絶たず、ネット社会に潜むリスクや問題点が改めて浮き彫りになっている。

 2008年6月、東京・秋葉原で17人が無差別に殺傷された事件は、犯行動機について「没頭していたネット掲示板で受けた嫌がらせに怒って犯行に及んだ」と認定された。同年4月、千葉県柏市で中3男子が17歳少年にバットで殴られて重傷を負った事件は、匿名の自己紹介サイト「プロフ」の書き込みを巡って少年が一方的に恨みを募らせたことが要因で、2人は初対面だった。

 ITジャーナリストの三上洋さんは「ネットの世界は匿名性もあって発言がエスカレートしやすい。現実世界では出会わない人への憎悪が増す場所にもなり得る」と指摘。今回の事件については「逆恨みではないか」との見方を示した上で「ネット上のやりとりでは一方が正義感から書き込んだことも、相手にとってはリンチされているように思い込み、今回のような犯行に結び付いてしまう恐れがある」と話した。

 ネット上の投稿を見た千葉大の藤川大祐教授(教育方法学)は「被害者は容疑者に対し、殺人に結び付くほどのひどい発言や中傷はしていない。ネットリスクというよりも、容疑者がどういう心情で犯行に至ったのかを解明すべきだ」と話す。容疑者は2年ほど前から、ネット上でアカウントを変えながら暴言を書き込んでいたとみられており「このような書き込みが犯罪として認定されず、続けられていることにも問題がある」と言う。

 ネット社会がはらむ危険性として、藤川教授は「居場所が特定されやすい」という点を指摘。被害者は自身が主催するセミナーの場所と日時をネットで公表しており、近年増加するアイドルへのストーカー事件でもネット上の情報を基に居場所が特定されたケースが多いことを挙げた。

 ネット上の書き込みを巡っては、神奈川県の東名高速道路で起きたあおり運転に絡む追突死亡事故で、誤った情報を拡散させたとして福岡県警が男11人を名誉毀損(きそん)容疑で書類送検した事件もあった。藤川教授は「ネット上では自分の力が強くなっているという誤解、ゆがみが起きる。内容によっては刑罰の対象にもなるという認識を広げることも必要だ」と話した。

=2018/06/26付 西日本新聞朝刊=

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