参考人へのやじ 厳重注意では済まされぬ

西日本新聞

 国会が自ら招いた参考人にまで無神経なやじを飛ばすとは-。あきれてものが言えない。

 異論を遮ろうとしたのか。そもそも国民の意見に耳を傾ける意思がないのなら、議員バッジを着ける資格が疑われる。

 やじの主は自民党の穴見陽一衆院議員(大分1区)である。受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案を審議する衆院厚生労働委員会で、日本肺がん患者連絡会代表の長谷川一男さんに「いいかげんにしろ」と耳を疑うような言葉を飛ばしていた。

 長谷川さんはステージ4の肺がん患者で、自らが使うコルセットを示しながら受動喫煙の実態について語った。なのに、患者の立場をいたわるどころか、参考人に対する敬意も感じられない暴言に等しいやじだった。

 厚労委員長は穴見氏を厳重注意した。穴見氏も「不快な思いを与えたとすれば、心からの反省とともに深くおわびする」などと、自身の公式サイト上で謝罪した。

 それで済むのか。穴見氏は「喫煙者を必要以上に差別すべきではないとの思いでつぶやいた」と釈明したが、長谷川さんは喫煙者の立場にも一定の理解を示しながら発言していた。

 長谷川さんは「招かれて行った場でやじを浴びせられて、悲しく残念な気持ちになった」と語ったという。当然だろう。

 穴見氏には登院停止など厳しい懲罰が必要ではないか。

 国会で飛び交う機知に富んだやじは「議会の華」とも呼ばれてきた。それも今は昔である。このところ国会では低レベルで直接的なやじが目立つ。

 沖縄県で続いた米軍ヘリコプター不時着について、衆院本会議で内閣府副大臣だった松本文明氏は「それで何人死んだんだ」とやじり、辞任に追い込まれたのは記憶に新しい。

 受動喫煙対策を巡っては、大西英男衆院議員が自民党の会合で「(がん患者は)働かなくていい」とのやじを飛ばした。

 穴見氏や大西氏ら2012年初当選組はトラブルが多く「魔の3回生」とも呼ばれる。しかし、それだけが非常識なやじを生む理由ではあるまい。

 4月には経済産業省出身の首相秘書官が野党議員にやじを飛ばして、一時審議が止まった。やじではないが、長谷川さんには「死ね」など心ない嫌がらせメールが届いているという。

 そもそも安倍晋三首相や麻生太郎財務相が閣僚席からやじを飛ばす。そうした姿勢が若手議員や官僚らの非常識な言動を助長していないか。自らが国会の権威と社会のモラルをおとしめていることに気づくべきだ。首相を含めて国会議員にこそ「いいかげんにしろ」と言いたい。

=2018/06/26付 西日本新聞朝刊=

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