[対話×住民自治](中) 高校生の提案島に活気 長崎・壱岐市

西日本新聞

 住民から厳しい声を浴びた。「またワークショップか。意見を発散するだけで何も決まらない」。長崎県壱岐市で「対話会」の説明に回った富士ゼロックスの高下徳広さん(52)は「従来のワークショップとの違いを理解してもらうのに苦労した」と振り返る。

 富士ゼロックス、富士ゼロックス長崎と壱岐市は2015年10月に連携協定を結んだ。「壱岐なみらい創りプロジェクト」と題し、住民の夢やアイデアの実現を支援する。その素材を出し合うのが対話会で、誰でも参加できる。

 モデルは岩手県遠野市。富士ゼロックスが震災復興支援に活用した対話会に、壱岐市の白川博一市長(68)が着目。「ぜひ壱岐でも」と要請した。当初、住民は未知なる対話会に様子見や半信半疑の反応だった。

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 対話会は、あらかじめテーマを設定しない。「子どもの頃に楽しかったこと」など軟らかい話題で場をほぐし、やがて夢やアイデアの核心に移る。富士ゼロックスの研究所が考案したコミュニケーション技術だ。

 「例えば観光のようにテーマを絞ると、関係者しか参加しない。ふわっとした対話ほど発言しやすく、イノベーション(革新)が起きる」。高下さんの言葉通り、回を重ねると、ユニークなアイデアが湧いた。

 対話会を盛り上げたのは高校生だ。1年で10回の会合に集まった延べ1066人のうち、ほぼ半数が壱岐高と壱岐商高の生徒。「大人と島の未来を話すのが面白い」。こんな機会を待っていたのかもしれない。

 島を活気づける提案は次々に実現した。倉庫を改修したテレワークセンター、路線バスのラッピング広告。島を訪れた人を高校生が中心になって横断幕でもてなすと、島外でも話題になった。

 「高校生は大人が諦めたことでも口にするので応援したくなる」。果物店を営む下條明博さん(50)は、まちづくりの裾野を広げた対話会の成果に目を見張る。

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 対話は創造の源だ。高校生と島外の大学生が意見を交わす機会も派生し、写真のない風変わりな観光ポスターが生まれた。

 「神さま 仏さま お猿さま」と書かれたポスターの2次元コードをスマートフォンで読み取ると、名所「猿岩」を説明する音声が流れる。写真を見ずに、想像力を働かせて現地へ行ってもらおうと発案した。

 壱岐高3年の土肥有貴さん(18)は「普段接することのない大学生に、外から見た壱岐の魅力を教えてもらった」。ポスターは今年3~5月、福岡と壱岐を結ぶフェリーに掲示された。

 対話会は市長、漁協や農協などのトップが集まる会合にも広がった。若手を交え、肩書に縛られずに語り合うと、従来とは一味違うやりとりになるそうだ。

=2018/06/23付 西日本新聞朝刊=

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