[対話×住民自治](下) 合意形成担うのは市民 静岡・牧之原市

西日本新聞

 「対話のまちづくり」の先進地と呼ばれる静岡県牧之原市。地域の課題や未来を住民が語る場をつくり、運営を住民に委ねる。参加者の発言を引き出す進行役「市民ファシリテーター」の育成にも努める。

 3月下旬。閉館した公民館の代替施設を話し合うために、利用団体の代表者など約40人が集まった。7班に分かれて意見を交わす。

 開始早々、全員が目をつぶり、片足立ちになった。体が揺れる。「最初に両足をついた方、今日の(班内の)進行係です」。市民ファシリテーターの堀池勇さん(65)が場を和ませながら役割を決めた。

 「自分ばかり話さない」「頭から否定しない」「楽しい雰囲気」がルール。どの班も話が弾む。他の人の発言には耳を傾ける。

 堀池さんはファシリテーター歴約10年の司法書士。「対話によるまちづくりは手間暇かけて1人の意見を大切にする。だから、いいものができる」。検討会でまとまった複数の意見は、市が代替施設の構想づくりに反映させる。

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 牧之原市は2005年に2町が合併して誕生した。初代市長は市政への市民参画と協働の推進を公約。対話の場をつくったが、持論を長々と話す人がいたこともあり、参加者は減った。

 一方通行の意見表明や討論ばかりでは、合意形成ができない。そこで、双方向のやりとりや調整にたけた市民ファシリテーターに会議の運営を任せた。「プロに頼むよりも、参加者と感覚が近い市民が良かった」と前政策協働部長の加藤彰さん(61)は話す。

 市はファシリテーターを養成する講座を開設。11年に自治基本条例、14年には市民参加条例を制定し、住民の意見を市政に反映する仕組みを整えた。「住民が意見を言える場所を行政が保障するのが大事。対話があれば行動も生まれる」。加藤さんは強調する。

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 活動中の市民ファシリテーターは25人。彼らの進行で住民が話し合ったテーマは、津波の防災、地区まちづくり計画など多岐にわたる。隣の静岡県御前崎市にある浜岡原発について、住民と中部電力社員が対話する機会にも携わった。

 次代を担う若者も対話のまちづくりに加わる。高校生には大人と語り合い、地元理解を深める場がある。17年度は6回の会合を重ね「地域でやりたい15のプロジェクト」を発表した。

 運営に協力する沢島千温さん(41)は「高校生の成長はめざましい。主体的に考える力を付けた人が増えれば、市民力が上がる」。沢島さんのような市民ファシリテーターに認定された生徒もいる。

 目指す地域像を住民が考え、話し合い、合意を形成する。対話はその第一歩。自治の礎である。

=2018/06/24付 西日本新聞朝刊=

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