元ホームレスの孤立死、後を絶たず 地域になじめず…国の防止策、十分でない面も

西日本新聞

 ホームレスの人が路上生活から抜け出し、アパートなどで自立した暮らしを始めたものの、誰にもみとられず孤立死するケースが後を絶たない。高齢な上に身内と疎遠なことが多く、地域にもなじめないのが原因という。国は生活困窮者自立支援制度を強化し、路上から地域社会に戻った人や一般の単身高齢者の孤立防止策を進めているが、まだ十分でない面がある。

 昨年12月、福岡市のアパートの一室。警察官が鍵の掛かったドアを開けると、50代の男性が中で倒れていた。1人暮らしで、死後1週間以上たっていた。

 男性は路上で暮らしていた2011年、自立を支援する福岡市の無料・低額宿泊所「抱樸(ほうぼく)館福岡」に入所。脳梗塞でまひした体のリハビリを始め、相談員の協力で身体障害者手帳や生活保護を申請。1年後に退所し、この部屋に移っていた。

 退所後も宿泊所には相談に訪れ、昨年11月は生活保護のケースワーカーも面会したという。相談員は「体調もだいぶ戻っていたのに…」と声を落とす。

 社会福祉法人グリーンコープが設けた抱樸館福岡は、10年の開所から1037人(18年2月)が利用。17年度は退所者のうち、男性のように死後1週間以上して見つかった人が9人いた。全て単身者だ。

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 路上生活者が地域で生活再建する場合、無料・低額宿泊所やシェルターなど官民の自立支援施設で生活や就労の訓練を続け、生活保護や年金を受給してアパートなどに移ることが多い。地域に戻っても福祉や医療、介護サービスを利用すれば担当者と接点が生まれる。

 例えば、新居で生活保護を受ければ自治体のケースワーカーが定期訪問する。受給しない人についても、国が18年度から、見守りや生活支援をする自治体に補助する仕組みを整えた。

 それでも、こうした人たちは周囲との関係づくりが苦手で孤立死のリスクが高い。自治体の定期訪問や電話による安否確認サービスも、本人申請が前提の場合は拒まれることもある。

 抱樸館福岡によると、退所者のうち住所の分かる約650人は訪問や電話で見守りを続けるが、坪田正昭主任は「少ないスタッフで常に全員を見るのは難しい。私たちは利用者が退所する際、職場でも何でもつながりを少しでも持つように働き掛けており、それを強めるしかない」と明かす。

 支援を30年近く続けるNPO法人「抱樸」(北九州市)は、地域に戻った人を支える窓口を設けてスタッフと市職員が常駐し、1500人以上のボランティアと見守りを続ける。奥田知志理事長は「抱樸では、元路上生活者と支援者が互助会をつくって孤立を防ぐ活動をしている。こうした取り組みがないと孤立死防止は難しい。国も『アフターケア』は対策が遅れている」と指摘する。

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 孤立死は孤独死とも呼ばれ、社会から取り残されて死後に放置されたケースとされる。国は明確な定義を定めておらず数も集計していないが、事態の深刻さをうかがわせる数字はある。

 保険会社でつくる一般社団法人「日本少額短期保険協会」(東京)は今年3月、賃貸住宅で入居者が1人で亡くなった際、加盟各社が部屋を元通りにするため支払った保険金の件数から孤立死数を推計した。それによると、17年2月~18年2月の孤立死は981人で、16年2月~17年1月の655人、15年4月~16年1月の440人から増加傾向にあった。単身高齢者や未婚者の増加で、最期を誰にも託せない人の数は、今後も増えるとみられている。

 明治学院大の河合克義名誉教授(社会福祉学)は「年金額が低い高齢者や生活保護受給者は社会参加のための交際費も限られ、孤立死のリスクが高い。若者の中にも非正規雇用や未婚者の増加で予備軍がいる。防ぐには地域住民や支援団体の見守りだけでは難しく、行政が全体状況を把握した上で対策を強化する必要がある」と指摘する。

=2018/06/29付 西日本新聞朝刊=

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