働き方改革法 働く人が納得する制度に

西日本新聞

 本当に働く人の命と健康を守り、働きがいや幸福を追求する法律なのか。多くの疑問を残したまま、働き方改革関連法がきのう参院本会議で成立した。

 年収1075万円以上の一部専門職を労働時間規制や残業代支払いの対象外とする「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の導入をはじめ、国会で論議が尽くされたとは言い難い。

 関連法に盛り込まれた制度の細部は、厚生労働相の諮問機関で労使代表も参加する労働政策審議会(労政審)の論議に委ねられる。あくまで関連法の枠内だが、働く人が納得できる内容になるか引き続き注視したい。

 安倍晋三首相が「今国会の最重要課題」と位置付けたのに、ずさんで曖昧な答弁を繰り返した政府の責任は重い。厚労省が法案作成や国会答弁の根拠にした労働時間調査では不適切なデータ処理が次々と発覚した。

 高プロ導入の理由付けにしたヒアリングもわずか12人で、制度設計前は1人だけだった。高プロは長時間労働や過労死につながると訴え、首相との面会を求めていた過労死遺族の要望も無視した形だ。丁寧な法整備過程だったとはとても言えない。

 本来なら調査やヒアリングからやり直すべきだが、政府と与党は強引に押し切った。これでは首相の面目を最優先したと指摘されても仕方あるまい。

 関連法には、青天井だった時間外労働(残業)に罰則付き上限規制を設ける規制強化や、非正規労働者の待遇を改善する「同一労働同一賃金」なども盛り込まれた。働く人が待ち望んだ内容である。

 しかし労働時間の規制強化や働く人の保護策と、方向の異なる規制緩和の高プロが8本一括の法律改正に同居したため、国会論議は混迷を極めた。

 高プロが与野党攻防の焦点となる中、繁忙月の残業時間を労災認定基準と変わらない100時間未満などとした規制で十分か-など、強化策を巡る論議は消化不良に終わった。

 高プロを巡っては「望まない人には本当に適用されないのか」「対象が無原則に拡大されないか」など疑問や懸念が拭えない。新たな「働き方」が導入される職場で働く人が不利益を被らない工夫が必要だ。

 参院厚生労働委は28日の採決に合わせて、高プロを導入する全事業所への立ち入り調査を政府に求めるなど47項目にも及ぶ付帯決議を可決した。成立してもなお関連法が抱える課題の多さを象徴している。

 高プロの導入要件など今後、厚労省令で定める詳細な内容は約60件に上る。働く人本位の働き方改革にするために、労政審には徹底的な論議を求めたい。

=2018/06/30付 西日本新聞朝刊=

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