曲折20年 禁教の歴史に光 潜伏キリシタン世界遺産 構成資産外にも価値 包括的な発信必要

西日本新聞

 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界文化遺産登録が決まった。長崎で世界遺産に向けた検討が始まったのは20年近く前。テーマや構成資産の見直しをはじめ、異例の曲折を経て念願を果たした。潜伏キリシタンの世界は、登録された資産にとどまらない歴史と奥行きを持つ。その価値をどのように伝えるかも課題となる。

 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、12の構成資産だけでは「潜伏キリシタン」の理解には不十分だとの指摘がある。当初登録を目指した「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」に対し国際記念物遺跡会議(イコモス)から「禁教期に焦点を」との助言を受けて構成を組み替えたが、禁教期の理解を進める資産を外したままだからだ。構成資産に含まれていない地域の歴史も包括的に伝えていく必要がある。

 長崎市の「外海(そとめ)の出津(しつ)集落」から東へ約2・5キロ離れた山中にキリシタンを祭る枯松神社がある。

 1938年に初めて建立された社殿は外海地域のキリシタンに影響を与えた伝道師バスチャンの師、サン・ジワンのものとされるキリシタン墓の上にあり、以前から「枯れ松さん」「サン・ジワン様」と呼ばれていた。入り口付近には潜伏キリシタンがオラショ=祈祷(きとう)=を唱えた「祈りの岩」もある。祭礼はかくれキリシタン、カトリック復帰者、改宗した仏教徒の三者で行う。表向きは仏教徒だった禁教期のキリシタン信仰の象徴的な存在だ。

 枯松神社がある黒崎地区には1920年完成の黒崎教会もある。しかし「教会群」の構成資産には入らず、「潜伏キリシタン」に変更になっても対象外となった。同地区に住む長崎外海キリシタン研究会代表の松川隆治さん(78)は「祈りの岩は10年ほど前にイコモスが注目した。黒崎抜きで潜伏キリシタンを語ることはできない」と言う。

 禁教期の信仰を伝えるかくれキリシタンは、世界遺産登録への機運が高まる中で注目を集めるようになった。今も信者が300人ほどいる長崎県平戸市・生月島は当初から構成資産になっていない。生月町博物館「島の館」の中園成生学芸員は「かくれキリシタンの位置付けをきちんとし、世界遺産の中でどう捉えるかが課題だ」と今後を見据える。

 黒崎や生月、信徒の大量発覚が4度起きた長崎市浦上地区などはいずれも国の文化財指定がなく構成資産から外れたが、禁教期と深く関わる場所抜きで潜伏キリシタンを語れるのか。早稲田大の大橋幸泰教授(近世史)は「資産という『点』ではなく地域全体として捉えるのが求められる考え方」と指摘する。

 今回の登録を受け、国や関係自治体は、世界的にも類例を見ない250年にわたる禁教の歴史を伝えるために、構成資産以外にも目を向けた発信に力を入れてほしい。

=2018/07/01付 西日本新聞朝刊=

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