米中貿易戦争 報復連鎖は成長の脅威だ

西日本新聞

 不毛な貿易戦争突入を食い止めることはできなかったのか。米国の暴走を強く憂慮する。

 中国の知的財産権侵害への制裁措置として500億ドル(約5兆5千億円)分の中国製品に対し25%の追加関税賦課を予告していた米国が6日、その第1弾となる産業用ロボットや電子部品など818品目(約340億ドル)への追加関税を発動した。

 米国の制裁関税に対し、中国も大豆や牛肉、豚肉など農産物を中心とする米国産品に同規模の報復関税を即座に発動した。

 米国と中国の二大経済大国が互いに高関税を掛け合う最悪の事態が現実となった。この貿易戦争が激化すれば両国の経済だけでなく世界各国に悪影響が及びかねない。これ以上、対立を先鋭化させ世界経済の成長を脅かす愚は避けねばならない。

 米中の貿易戦争の背景には、製造大国として急速に発展する中国への米国の不満や焦りがあるとされる。

 不満として挙げられるのは、3752億ドル(約42兆円)に上る巨額の対中貿易赤字だ。

 焦りは中国の習近平国家主席が主導する産業政策「中国製造2025」に対するものだ。次世代情報技術や航空宇宙など10分野の高度化を目指す野心的計画で、米国は中国が米国企業に技術移転を強要したり、国有企業に補助金を出したりして、競争をゆがめ不公正な手段でハイテク覇権を握ろうとしている-と警戒している。

 だからと言って、頭ごなしに理不尽な制裁関税を発動するのは筋違いだ。トランプ氏にとっては11月の中間選挙に向けた支持者へのアピールという意味合いなのだろうが、不公正な慣行に対してはルールに基づき多国間の枠組みで是正を求めていくのが筋である。世界貿易に正当な秩序を取り戻さなくてはならない。

 今回の対中制裁の対象品目は、工作機械やハイテク製品が中心で今後、米国は残る160億ドル分の中国製品については半導体や電化製品、化学製品などを関税対象にするという。米国がこの第2弾に踏み切れば、中国も同規模の報復措置を取る見通しだ。米国はこうした中国の報復の動きに、追加関税の対象を中国からのほぼ全ての輸入品に拡大するとも警告している。

 これでは収拾がつかなくなる。報復措置の連鎖で材料費や販売価格が上昇すれば、消費や投資の落ち込みは各国に及ぶ。

 さらに断固として阻止せねばならないのは米国が検討中の輸入自動車への追加関税措置だ。実施されれば世界的なサプライチェーン(部品供給網)に亀裂が走る。米国の独善、報復の連鎖に強力な歯止めが必要だ。

=2018/07/07付 西日本新聞朝刊=

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