「島っ子」受け入れ広がる 人口激減の県内離島 福岡から対馬に3人「留学」 学校存続、活性化に期待

西日本新聞

離島留学生の3人は里親の村瀬智哉さん(左から2人目)の家庭で暮らし、学校に通う。左が佐野主芳さん。右から川原薫君、島田和さん 拡大

離島留学生の3人は里親の村瀬智哉さん(左から2人目)の家庭で暮らし、学校に通う。左が佐野主芳さん。右から川原薫君、島田和さん

英語の授業で質問に答える島田和さん

 自然豊かな島の学校に島外の子どもを受け入れる「離島留学」。人口流出と少子高齢化が顕著な県内の離島でも、学校の存続に生かし、地域のにぎわいを持続させる一案として取り組みが広がっている。対馬市では昨年度、助成制度を活用できる「島っこ留学」の導入から3年目で初めて、福岡県から1人が島の中学校へ。今春も2人が“島っこ”に仲間入りした。

 「走るのが好き。山がたくさんあって、海や川もきれいで自然がたくさんでビックリした。みんながやさしくておもしろい」

 対馬・峰町の西部中に昨年9月、福岡市から転校してきた佐野主芳(しゅうほ)さん(13)は笑顔で話した。対馬市が2015年度に制度化した「島っこ留学生」の第1号。学年も2年生になった。

 この春には新たに福岡市から中学生が、北九州市から小学生が1人ずつ対馬へ。学校近くの里親家庭で留学生3人が一緒に暮らし、学校へ通う。

 福岡市内から佐野さんと同じ中学に入学した1年の島田和(やまと)さん(13)は「全校生徒が31人と聞いてびっくりした。人数が少ないからクラス全員と友達になれるのがうれしい。島の歴史も学びたい」。北九州市から峰町の西小に転校した4年の川原薫君(10)も「算数が好き。対馬は珍しい花がたくさんある。ツシマヤマネコにも興味があるので自然を楽しみたい」と、島での学校生活、暮らしを満喫しているようだ。

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 対馬市教育委員会によると、離島の人口が激減していく中で、対馬の小中学生は四半世紀で6割以上減った。学校数を1989年度と比べると、小学校は38校(児童数4402人)から19校(同1564人)に半減。中学校も25校(同2280人)が13校(同767人)に統廃合された。存続した学校でも、各学年の児童生徒数が一定数以下の場合は、異なる学年が一緒に学ぶ「複式学級」の導入を余儀なくされ、教諭も減らされる。

 小中学校の活性化策の一つとして導入を決めた「島っこ留学」は、小学4年~中学生が対象。島内の家庭で子どもを受け入れる「里親型」で、市は里親への委託費7万円(月額)のうち4万円を補助。帰省費も夏と冬の2回、それぞれ2万円を定額助成している。

 16年度以降は、日本在来馬の希少種「対州馬(たいしゅうば)」や漁業に親しめる2泊3日の「体験留学」を企画するなどPRを強化。「のんびりとした環境の中で、心豊かな人間に成長してほしい」と願う都市部の保護者の思いもあり、市の担当者は「ようやく軌道に乗り始めた」と手応えを感じている。

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 3人の「島っこ」の里親を妻の英子さん(52)と引き受けた旅館業を営む村瀬智哉さん(57)=峰町=は「地元の学校を廃校にしたくない。子どもがいない所には島おこしはない。強い心と広い心、親切な心を育てて親御さんの元に返してあげたい」。村瀬家の3人の子どもは既に独立。家庭は再びにぎやかになった。

 離島留学生2人が通う西部中の八坂健一校長は「2人はスポーツや対馬の歴史にも興味を持ち、何事にも意欲的。島の生徒にとっても新しい仲間との出会いが良い刺激になり、多様な考え方や見方を培うことにつながっている」と話した。

 市は「島っこ留学生」を20年度には15人、25年度には30人という目標を掲げ、国の交付金も活用して支援制度を拡充する方針。空き家を改修した寮の整備も検討している。


■島暮らしを自治体が支援 県立高にも助成制度

 「しま留学制度」をいち早く導入した五島市では、2016年度に小中学生3人が初めて同制度を活用して転校。17年度は計10人に増え、本年度は久賀島で10人、奈留島で4人が学んでいる。

 壱岐市は2学期に始める小中学生対象の「いきっこ留学」の制度利用者を31日まで募集中。島の里親宅から通う「里親留学」、島に祖父母などが住む家庭向けの「孫戻し留学」、家族と一緒に島に移り住む「親子留学」に、それぞれ生活費などの一部を助成する。市の担当者は「島の豊かな自然や文化に触れ、視野を広げてほしい。少人数学級を生かしたきめ細かい学習指導も受けられる」と話す。

 小値賀町は小中学生を含む家族の移住について、学校で必要な物品の購入費や引っ越し費用を支援(上限20万円)する「ふるさと留学事業」を用意。充実した教育環境を誇る島での学びをPRしている。新上五島町も来年度からの受け入れを検討しているという。

 県教育委員会は、離島の県立高校で外国語や歴史、スポーツなどを専門的に学ぶ「離島留学」を後押し。各校が特色あるカリキュラムを持ち、島での生活については公的な助成制度を用意している。

=2018/07/19付 西日本新聞朝刊=

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