僕は目で音を聴く(13) 手話は目立つから困る?

西日本新聞

 前の職場にいたときの話です。別のフロアで働いているろう者(耳の聞こえない人)が用事で来たついでに、私のところに寄ってきて「午後も頑張ろう!」と手話で声掛けしてくれました。忙しいときにそういう言葉はうれしいものです。

 こちらも手話で「ありがとう!」と返したところ、一人の聴者(聞こえる人)の同僚が私のところにやってきて「ここは忙しい職場なので、手話は目立つ。皆の目に留まるから、悪いけど向こうで会話をして」と言うのです。とてもびっくりしました。だだっ広いフロアで、お客さんから見える場所でもありません。手話も言語の一つなのに、それを否定された気持ちになってしまって…。忙しい職場は分かっていますが、口話(相手の唇の動きで言葉を理解し、自らは発話して意思伝達する)によって、例えば仕事に関係ない世間話をしていても何も言われることはありません。おかしくないだろうかと、もやもやした気持ちが収まりませんでした。

 ろう者の知り合いも、仕事の合間にろう者同士が手話で楽しく会話していた際、上司から「何の話をしていたの? どうして笑っていたの?」と聞かれたことがあるそう。知り合いが怒って「あなたたちも会話して笑いますよね。どうして手話を使って笑ってはいけないのですか」と問い詰めると、上司は何も言えなかったといいます。

 関東の会社に勤めていた約10年前、ろう者の先輩が立ち上げた社内の手話サークルで一緒に指導したことがあります。月1回、仕事終わりに会議室で開き、5~8人の聴者が参加してくれました。ある人は避難訓練で通訳もしてくれて助かりました。このように手話を理解し、歩み寄ってくれる人もいるのですが…。

 私の第一の言語は、心から楽しく語り合える手話です。手話がろう者の大切なコミュニケーションの手段として受け入れられていないとすれば、不満に思う人は私だけではないはず。聴者同士が話しながら笑い合うのと、何ら差はありません。
 (サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)

 ◆プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。

※平本龍之介さんによる漫画「ひらもとの人生道」第1巻(デザインエッグ社発行)が好評発売中!

=2018/07/12付 西日本新聞朝刊=

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