有休取れと言われても 働き方関連法で義務化 人手不足、慣習の壁

西日本新聞

 通常国会で成立した働き方改革関連法には、有給休暇(有休)取得の義務化が盛り込まれた。世界各国と比べ、日本の有休消化率は低い。ただ、宿泊・飲食業を中心に「取れと言われても、人手不足で取れない」との嘆き節も。正社員の16%が有休を取っていないという調査結果もある。労働者の「休み方」はどう変わるのか。

 関連法は、有休が年10日以上ある労働者について、使用者が時季を定めて5日を取得させるよう義務付けた。来年4月に施行され、違反すれば罰金30万円以下の罰則もある。厚生労働省によると、今後定める省令で、管理簿の作成など企業側の取り組みを具体化する方針という。

 取得の実情はどうか。独立行政法人労働政策研究・研修機構が正社員を対象に実施した2011年の調査によると、1年間の有休取得日数は最多が「15日以上」(20・3%)だったが、次いで「ゼロ」(16・4%)、「1~3日」(16・1%)と二極化されていた。5日より少ない人は半数近くに上った。

 業種によっても差がある。厚労省の17年の就労条件総合調査によると、年間平均で最多は「電気・ガス・熱供給・水道業」の14日。「宿泊業・飲食サービス業」は5・4日と最も少なく、「卸売業・小売業」「生活関連サービス業・娯楽業」「建設業」も6・4~6・9日と低水準だった。

 なぜ取れないのか。福岡市内のホテル幹部は「うちは年中無休。急に10部屋単位の宿泊や30人規模のレストランの予約が入り、人手が必要になることがある」と頭を抱える。

 スタッフには年1回、最低5連休を取るよう呼び掛けているが、特に接客部門は休みにくく、消化率は2割ほど。「スタッフを増やそうにも人手不足で応募が少ない」。窮余の策として、半日単位で有休を取得できる制度を設けたという。

 一方で、建設業などは工期を守るために有休取得が難しい事情がある。

 企業文化との関連を指摘する声も。早稲田大の小倉一哉教授(労働経済学)は「日本では病気欠勤に備えて有休を使わない慣習がある。職場の仲間に遠慮したり、人事考課に響くと考えて取得を控えたりするケースもある」と指摘する。

 労務管理セミナーを開く社会保険労務士の吉野正人さん(福岡県久留米市)は、労使が協定を結んで取得日を割り振る「計画的付与制度」の活用を勧める。その上で「飲食チェーンの店長など責任の重い社員ほど有休を取りにくい。管理職が職場をヒアリングし、個々人の業務の負荷を見直すことが必要だ」と呼び掛けている。

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「経営者の意識次第」 消化率90%超、福岡の拓新産業

 30年前から働き方改革に取り組む会社がある。福岡市早良区の建設機材リース「拓新産業」(従業員75人)は、有給休暇の消化率90%以上を続ける。「社員満足主義」を徹底するとして、新卒採用試験では採用数2人に対し就活生100人以上が応募する人気企業となっている。

 きっかけは1989年、新卒採用の合同企業説明会だった。学生は大手志向が強く、ブースは閑散。危機感を強めた藤河次宏会長は「選んでもらえる会社に」と、朝礼で有休完全消化や完全週休2日制の実現を宣言した。その後も残業・休日出勤ゼロを打ち出した。

 実現に向けた業務見直しの一つが、取引先の売上比率を分散させること。特定業者に売り上げが集中すれば急な発注を断れず、無理な仕事が生じる恐れがある。顧客の「言いなり」にならないよう取引先を増やし、1社当たりの比率を2%まで抑えた。

 社内でも特定の人にしかできない「属人的な業務」を減らし、1人で複数の業務をこなす「マルチタスク」を心掛けた。持ち場を交代させ、誰かが休んでも互いにカバーできる職場環境を整えた。

 残業をゼロにしても売上高は30年前から変わらず、利益は10倍に増えた。社員の業務改善の提案で、コストカットが進んだという。

 藤河会長は「働き方改革は人に対する投資。たとえ一時的にコストがかかっても、長い目で見れば利益につながっていく。経営者の意識次第で、従業員の働き方は変えられる」と話す。

=2018/07/24付 西日本新聞朝刊=

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