【地方公務員最前線 変わる仕事と役割】<1>「5時から男」街を泳ぐ 官民の垣根自在に越え

西日本新聞

 自称「空き家買っちゃう系公務員」の大分県佐伯市職員後藤好信(35)は2015年、10年以上も空き家になっていた元時計店を購入した。寂れかけた同市船頭町の旧市街地を何とかしたい。あるアイデアがあった。

 築84年の古民家。約2千万円かけたリノベーション(大規模改修)に「住民との共有」を掲げた。同じく空き家の元旅館を購入した市職員河野功寛(かつひろ)(30)を巻き込み「後藤家、河野家移住計画」を敢行する。

 解体ワークショップ、音楽ライブ、しっくい塗り体験…。住民を呼び込む仕掛けに人が集った。よみがえった古民家に、市内から家族5人で転居。1階にはスイーツ店なども入居した。フリースペースには裸電球がともり、若者らが次のイベントを話し合う。

 地域に責任を持つ市職員の誇りと自負。担当の仕事は市中心部から撤退した大型スーパー跡地の再開発だが、それだけでは役割を果たせないと思う。新人職員らに請われて話をする際、後藤と河野はいつも、こう投げかける。

 「与えられた仕事しかしないのは『職務人』。街に飛び込み、課題を見つけて解決する。自分たちは24時間、公務員でありたい」

    ◇   ◇

 福岡市職員の中島賢一(46)は民間出身。前例や上司の指示にとらわれず「自分目線で仕事をする」と決めている。

 無類のゲーム好き。IT業界を経て04年、競争率約120倍の民間枠を突破し、福岡県庁入りした。13年、同市に移籍した。

 市経済観光文化局の係長時代、市などが主催するゲームコンテストを変えた。業界関係者200人程度が集まるイベントだったが、市内のキャナルシティ博多でアニメライブなどと併せて実施し、約3万人を集客した。

 現在は出向先の「福岡アジア都市研究所」で格闘技などの対戦ゲーム「eスポーツ」を研究中。手弁当で子どものカードゲーム大会やIT系の市民イベントも手伝う。個人的に持ち掛けられる相談はどんどん増え、年間200件。「起業したい」「私の漫画を見て」と引きも切らない。

 地下鉄で数駅先に出張するにも書類や印鑑が必要な公務員の世界。最初は閉口したが「その堅さゆえに住民から信頼されている」と感じる。どこにでも出入りでき、誰にでも会える。「公務員ブランド」をフル活用すれば、活動の幅は無限に広がっていく。

 「行政と民間の人的資源を掛け合わせ、社会を良くしていく。公務員の仕事は面白い」。軽やかに官民の垣根を越え、知る人から「スーパー係長」と呼ばれるようになった中島はいま、そう思う。 (敬称略)

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 地方公務員のあり方に新たな潮流が起きている。時代が求める仕事や役割は変化し、人員削減や働き方改革の波も押し寄せる。来春の統一地方選に向け、私たちの暮らしや地域を支える自治体の現場から報告する。

=2018/07/17付 西日本新聞朝刊=

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