【地方公務員最前線 変わる仕事と役割】<2>県庁マンは「営業マン」

西日本新聞

 2月下旬、福岡県輸出促進課輸出第一係長の木部匡之(43)は米東部ニュージャージー州のスーパーにいた。県産ブランドイチゴ「あまおう」の販売促進フェア。海外への販路拡大をにらむ。

 「日本ナンバーワンのイチゴ」と売り場に立ちっぱなしで自ら試食を勧め、商品を倉庫に取りに行く。1日で百数十パックが売れ、手応えは十分。取材も入り、翌日のNHKの夜のニュースで全国放送された。

 ニューヨーク、ロサンゼルス、ホノルル。米国3都市をフェアや市場調査で12日間、飛び回った。帰国後、中1日で県産品PRの撮影を済ませると、翌日から中国で県産花卉(かき)の商談会。年間40日以上、海外十数都市で県産品を売り込む。

 駆け出しの税務課で、自動車税のクレジットカード納税制度を1年でつくりあげた。2年間の台北駐在後、2014年から県産品輸出促進を担う。

 木部は足で稼ぐ。米国担当になった17年、米国市場に進出するこんにゃくや油揚げの県内業者などに輸出事情を一から聞いて回った。別件の東京出張を活用し、貿易会社に飛び込んで人脈を広げた。米国滞在中、予定になかったフェアを急きょ店と交渉し、追加したことも。

 自治体のセールスマンと言えば企業誘致の担当だった時代は過ぎた。生産現場を巡り、海外市場を相手に立ち回る木部の仕事はさながら商社マン。単年度の自治体予算を意識し「1年ごとに結果を出す」と策を練る。

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 「わが町」の売り込みはモノだけではない。雲をつかむようなイメージ戦略を担う自治体職員もいる。

 熊本県のPRキャラクター「くまモン」。地元業者が商標を無料で使えることもあり、関連商品の売上高は17年までに5千億円を超えた。県東京事務所長の成尾雅貴(59)は10年のくまモン誕生以来、一貫してプロデュースに関わる。

 くまモンは11年、「ゆるキャラグランプリ」1位を獲得した。その年、大手レーベル3社から舞い込んだ「くまモン体操」CD化の提案を、成尾は断った。

 熊本に貢献してこそのくまモン。キャラクターだけが全国区になっても意味がないと思った。これを機に、成尾はくまモンの行動規範づくりに着手した。サプライズ(驚き)、ストーリー(物語性)、シェア(幸福感の共有)の「三つのS」にたどり着いた。

 成尾はいま、東京・銀座で「銀座 くまモン化プロジェクト」に忙しい。銀座にある県のアンテナショップの集客につなげようと、近隣の百貨店などとイベントを企画する。熊本地震後、復興のシンボルになったくまモンの「実力」が試される。

 「住民が古里をリスペクトする(誇る)ことは、行政がいくらお金をかけても難しい。くま(モン)はそれを実現してくれた」。定年まであと8カ月。手探りで育て上げたゆるキャラとともに、成尾は37年間の公務員生活を締めくくる。 (敬称略)

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 地方公務員のあり方に新たな潮流が起きている。時代が求める仕事や役割は変化し、人員削減や働き方改革の波も押し寄せる。来春の統一地方選に向け、私たちの暮らしや地域を支える自治体の現場から報告する。

=2018/07/18付 西日本新聞朝刊=

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