【地方公務員最前線 変わる仕事と役割】<3>窓口から職員が消えた

西日本新聞

 転入転出の届け出などを受け付け、多くの住民とじかに接する窓口職員は、その役所の「顔」と言われる。だがカウンターに座っているのが職員ではないという市町村は、もはや珍しくない。

 福岡県篠栗町もその一つ。窓口業務を担うのは、町から委託された民間会社だ。

 制服を着た社員たちは、カウンターで住民票の写しや各種証明書の交付申請を受け付ける。仕切りの向こうにいる職員がそれを処理し、社員が住民に手渡す。

 町は2014年度、本格的に業務の民間委託を始めた。住民課などの窓口業務のほか、図書館の運営などで、委託料は年間約2億4千万円。

 実は非常勤職員で対応していた10年前よりも経費は8千万円ほど膨らんだ。だが民間委託では、非常勤職員を雇用した場合に必要な社会保険などの関連事務が不要になる。町総務課長の大塚哲雄(59)は「その分、職員が政策立案に充てる時間が増えた」と効果を説く。

 職員は窓口から消えた。社員への業務の指示はあくまで雇用主の会社。職員が社員に直接指示すると、偽装請負になる。導入当初はこれに抵触するケースがあり、労働局の指導を受けた。職員と社員は同じフロアにいながら会話ができない。

 住民からの苦情は「待ち時間が長いときがある」という程度だという。大塚は胸を張る。「企業の社員は厳しく教育されている。民間のノウハウが導入され、住民サービスの質が向上した」

    ◇    ◇

 住民とじかに接する仕事が効率化の波にのまれ、職員の手を離れていく‐。

 福岡市消費生活センターでは、相談業務を市内の民間企業が担う。全国的には自治体の直接運営が大半だが、市が13年から企業委託に踏み切った。

 啓発や事業者の指導を担当する市職員も同じフロアにいるが、受託企業が雇用する相談員の社員とは壁で仕切られ、自由に往来できない。これも偽装請負の防止策。社員からは「相談員は市の直接雇用にした方が、市の消費者行政担当や福祉部門などとの連携はスムーズになる」との声が漏れる。

 委託前、不当な取引行為をした事業者への文書指導は年間5件あったが、委託後4年間はゼロ。相談現場の声が行政側に届きにくくなっているとの指摘がある。相談員1人当たりの件数も他都市に比べて多く、今年春からの欠員は、激務と待遇の悪さからいまだに埋まらない。

 公務員がやるべき仕事と、やらなくてもいい仕事。センター所長の城戸政史(52)は「相談業務は民間で、啓発や指導は行政で。役割はそれぞれある」と現状を肯定する。

 その論理と必然性は、どれほど住民に理解されているだろうか。センターで市民の相談を受けるある社員は、電話口での罵倒が耳に残っている。

 「あんたたちはどうせ職員じゃないんだろ。職員を出してこい」 (敬称略)

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 地方公務員のあり方に新たな潮流が起きている。時代が求める仕事や役割は変化し、人員削減や働き方改革の波も押し寄せる。来春の統一地方選に向け、私たちの暮らしや地域を支える自治体の現場から報告する。

=2018/07/20付 西日本新聞朝刊=

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