【地方公務員最前線 変わる仕事と役割】<4>目指せ脱「金太郎あめ」

西日本新聞

 安倍晋三政権の看板政策の一つ、地方創生が本格的に動きだした2015年。自治体が「地方版総合戦略」をつくり、政府のお眼鏡にかなえば、関連交付金が下りてくることになった。さてどうするか。

 九州経済調査協会(福岡市)が15年に実施した調査によると、この策定作業の一部を民間コンサルティング会社などに外注した自治体は、回答した九州・沖縄・山口222自治体の7割に上った。多くが予算獲得のため、手っ取り早い「丸投げ」に走った。

 福岡県筑前町は違った。15年春、町長の田頭喜久己(67)は「コンサルの画一的な戦略ではなく、町の顔が分かる独自の戦略を」と職員に指示した。

 町総務課長補佐の吉浦高幸(47)が、険しい顔で町長室に駆け込んできた。「1年ではできません。周辺自治体はコンサルに頼みます。町長、うちも外注を」。田頭はしかし、首を縦に振らなかった。

 腹を決めた吉浦は動いた。専従職員3人が人口や産業構造のデータを拾い、子育てグループから中学生まで意見交換を重ねた。そこから「中学卒業までの英検3級取得」などの政策目標を立案し、9カ月で戦略を作り上げた。

 「できない理由を探していたのだと思う」。後ろ向きになっていた当時の自分を、吉浦はそう振り返る。

 職員は自信をつけた。コンサルに数百万円払っていた町総合計画も職員で作成することにし、6月に着手した。

 「外注できる部分とそうでないコア(核)の施策がある。町を知るプロの職員が、町の未来図を描かないと」。目覚めた吉浦は言う。

    ◇    ◇

 元総務省キャリア官僚の山田朝夫(56)は自称「流しの公務員」。入省後の1997年から大分県の久住町(現竹田市)や臼杵市などに出向し、まちづくりにのめり込んだ。

 2012年に退職し、現在は愛知県常滑市の副市長を務める山田。昨年、臼杵市の依頼を受け、新市庁舎建設を考える「市民会議」の進行役を務めた。

 公募と無作為抽出で選んだ市民に自由討議してもらった。約8カ月かけて市民がまとめた7案は今年4月、報告会で発表された。住民対話を積み上げ、政策や意思決定につなげるのが山田のやり方だ。

 中央官僚は現場を見ずに机上で政策をつくりがち。一方で自治体は国に萎縮し、指示通りにしか政策を進められなかったり、政策自体が現場にそぐわなかったりすることがある。

 コンサル頼みの「金太郎あめ」を脱する鍵は、住民との対話。時間はかかるが、難しいことではない。オリジナル性と手触り感のある地域戦略が、そこから自然に紡ぎ出される。

 「政策プロセスに最初から市民を巻き込む。意見を吸い上げ、政策を練り上げ、市民と一緒に推進していく。これからの市町村職員に求められるのは、そういうスキルだ」。多くの自治体と職員を知る「流し」の山田は、そう説く。 (敬称略)

    *   *

 地方公務員のあり方に新たな潮流が起きている。時代が求める仕事や役割は変化し、人員削減や働き方改革の波も押し寄せる。来春の統一地方選に向け、私たちの暮らしや地域を支える自治体の現場から報告する。

=2018/07/21付 西日本新聞朝刊=

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ